「ごはんは裏切らない」と伝えたい
アメリカの留学先の寮では、舌に合わない料理を食べ続けることになり、ショックを受けたという経験も。そんな中でパイの実の美味しさに感動するのですが、平野さんの人生には何度か、「美味しく食べられない時間」がありました。
味に傷つく時間が、むしろ、食べ物を輝かせるために必要なのかもしれません。何かを美味しいと思う時、必ずそこに、他の味で傷ついた経験が内包されている気がします。ということは、どんな味も味わってみるべきだったんだなと、後になって気づくというか。これは食べ物に限らず、経験全般の話かもしれないですが。
留学していた当時は一刻も早く日本に帰りたかったですが(笑)、それまでの価値観や日々を一回壊される経験は、大事なんじゃないかと思うことが増えました。それがひるがえって、食の喜びを輝かせてくれるので。
食に傷ついたあと、食にたくさん救われてきたという平野さん。本書の帯には、「やっぱり虚無にはごはんが効く」という言葉が書かれています。
この言葉の通りで、食べ物は、心を耕してくれるものだなぁと思っています。私は、食べ物に救われてここまで生きてこられたという感覚がすごくあって。どんなつらい時も、苦しい時も、何かを食べることで前を向けることがあると思います。
食べることが「人生のおまもり」になるのかもという予感を持っていると、私のように、実際に救われに行けることもあるはずです。「ごはんは裏切らないよ」というメッセージを、この本でみなさんにお伝えしたいです。
食を通して、心までじんわりと届く一冊。お腹を空かせて、食べたいものを考えながら読んでみてはいかがでしょう。
東京バーゲンマニア編集部
Written by: 馬場レオン
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。