「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」
スマホは見られるのに、もうずっと本を読めてない......という人は、スマホ社会の現代に少なくないのではないでしょうか。
文芸評論家・三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)という本が、いま注目されています。
本書の筆者は子どものころから「読書の虫」で、兼業での執筆活動をしてきたという三宅さん。社会人になってから、読書をしていない自分にショックを受けたそうです。そこで三宅さんは、「労働」と「読書」の歴史に着目し、人は「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を独自の切り口から深掘りしました。
社会人1年目で痛感したこと
はじめに、働いていて本が読めなくなった自身の体験が書かれています。
社会人1年目のころ、会社に行って帰ってくるだけでもハードな日々で、「そういえば私、最近、全然本を読んでない!!」とショックを受けたという三宅さん。SNSやYouTubeを眺めている時間を読書に充てたらいいと頭ではわかっていても、スマホに手が伸びてしまう。「なんだか自分が自分じゃないみたいだった」と当時を振り返ります。
読書は三宅さんにとって、「人生に不可欠な文化」。しかし、労働と文化(読書に限らず、自分の人生に大切な文化的な時間)の両立は困難であると、痛感したといいます。その3年半後、「本をじっくり読みたすぎるあまり」会社をやめたそうです。
本書では、近代以降の日本の労働史と読書史を並べて、「日本人はどうやって働きながら本を読んできたのか?」「なぜ現代の私たちは、働きながら本を読むことに困難を感じているのか?」を考察していきます。
どうすれば私たちは、働きながら、本を読めるのでしょう。
その問いを突き詰めると、結局ここにたどり着きます。
どういう働き方であれば、人間らしく、労働と文化を両立できるのか?
会社をやめるところまではいかないにしても、これ自分のことだ......と共感した人も多いのではないでしょうか。両立の壁にぶち当たったところから、「労働と読書をめぐる旅路」ははじまります。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。