出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2016/10/12

【第49回】劇団四季の新たな挑戦 新作ミュージカル「ノートルダムの鐘」ついに日本初演!

演劇的にシンボリックな演出

2014年アメリカ・サンディエゴで初演されたこの舞台のミュージカルナンバーは、『美女と野獣』『アラジン』の作曲家アラン・メンケンと『ウィキッド』の作詞家スティーブン・シュワルツの二人の巨匠の手による1996年のアニメーション映画に基づいています。二人はユーゴーの小説の中で描かれている中世のパリの雰囲気を尊重し叙情的な楽曲創りを目指しました。結果、中世の古楽器を採用し、オラトリオのように美しく荘厳な楽曲を数多く創り上げることに成功したのです。

そして演出を担当したスコット・シュワルツは、この素晴らしい楽曲を作品の柱に据え、アニメ版にあるようなコメディ要素を極力排し、この作品を大人向けの舞台として、カジモド(ノートルダム大聖堂の鐘突き)、フロロー(大聖堂の聖職者)、エスメラルダ(ジプシーの娘)、フィーバス(大聖堂警備隊長)の4人の登場人物による濃密な心理ドラマにすることを目指しました。中世ヨーロッパの時代に実在した演劇的技法を用い、舞台上に聖歌隊を設置し、物語をキャストと聖歌隊全員とで進行していきます。作品の世界観を象徴的にまとめた舞台セットと俳優の身体を駆使した所作や歌唱によって表現されていく演出に、感動が観客の心に深く刺さります。

登場人物たちの宿命をドラマティックかつシリアスに描き出した荘厳な人間ドラマ。今まで劇団四季を一度も見たことがない人達も、熱狂的な四季ファンも、必ず満足するに違いない大人のための演劇作品だと思います。

東京・浜松町の四季劇場も、この地区の再開発のため6月末をもって一旦閉館となります。限られた席を求めて、チケットの争奪戦が予想されますので、早めに確保されることをオススメします。


ミュージカル『ノートルダムの鐘』

東京公演:12月11日(日)~2017年6月(予定) 四季劇場〔秋〕
10月15日(土)第1期公演(2017年4月30日(日)までの計130回公演分)一般発売開始
作曲:アラン・メンケン
作詞:スティーブン・シュワルツ
脚本:ピーター・パーネル
演出:スコット・シュワルツ
出演候補キャスト
カジモド:海宝直人、飯田達郎、田中彰孝
フロロー:芝清道、野中万寿夫
エスメラルダ:岡村美南、宮田愛
フィーバス:佐久間仁、清水大星
クロパン:阿部よしつぐ、吉賀陶馬ワイス

作品の詳細は公式サイトで。

出雲あきら 出雲あきら

演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に20年出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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