5年ぶりの来日! ロンドン演劇界の鬼才、ケン・ヒル版『オペラ座の怪人』を見逃すな
日本で『オペラ座の怪人』といえば、劇団四季によって度々上演され、2004年には映画化もされたアンドリュー・ロイド=ウェバー版が有名でしょう。しかし、それより先に『オペラ座の怪人』が上演されていたことは、あまり知られていないのではないでしょうか。
ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』が、ミュージカルとなって初めて世に送り出されたのは1976年のこと。ロンドン演劇界の鬼才と呼ばれたケン・ヒルの手によるものでした。その後、大改訂して1984年に再び上演した作品が大ヒットし、母国イギリスをはじめ、アメリカやカナダなど世界各国で上演されました。日本では1992年の初来日公演以降、何度も上演されており、今回は5年ぶりの来日公演となります。
これが原点!ロイド=ウェバーも脱帽した傑作
ロイド=ウェバー版に比べるとケン・ヒル版の日本での知名度は低いかもしれません。しかし、このケン・ヒル版こそが、ロイド=ウェバーが同作を手掛ける原点となった作品なのです。
1984年にケン・ヒル版の評判を聞きつけてロンドン公演を見たロイド=ウェバーは感激して、ケン・ヒルに新たな『オペラ座の怪人』の創作を提案しました。結局、2人のコラボレーションは実現せず、ロイド=ウェバーは自らの作曲で作品を作り上げ、2年後に初演することになります。世界中でロングラン中のロイド=ウェバー版が、ケン・ヒル版から多くの影響を受けたことは否めません。
おなじみのストーリー
パリ・オペラ座では、次々とおこる不思議な出来事と相まって、ここには幽霊が住んでいる、という噂が囁かれていました。しかし、着任したばかりの支配人レイチャードは関係者たちに幽霊にまつわる慣習を守るように忠告されてもまったく取り合いません。
その夜、オペラ『ファウスト』の公演で、出演者が不慮の死を遂げます。これは事故なのか......?そして、幽霊からの突然の手紙が支配人の元に。最高のボックス席の独占権と無名のコーラスガール、クリスティーンの起用を求める内容でした。支配人はクリスティーン自身がこの事件に関わっていると疑い、彼女を解雇します。支配人の息子で彼女の恋人のラウルも、彼女の楽屋から聞こえた謎の男の声に嫉妬し、かばおうとしません。
そんな時、一座の歌姫カルロッタがどうしても歌えないと訴えてきます。誰かに脅迫されている様子です。舞台にはカルロッタが立ち、歌はクリスティーンが歌うという妥協案をとることにしましたが、その夜の『ファウスト』もまた思わぬ大事故に見舞われてしまうのでした。
動揺するクリスティーンは、"謎の男"との不思議な体験をラウルに打ち明けますが、その物陰には"謎の男"の影が......。
そして今度は上演中の舞台からクリスティーンが消えてしまいます。彼女を救うためオペラ座の地下に足を踏み入れたラウルたち一行を待ち受けるのは......。
ロンドンミュージカル界の大スターが来日
ヴェルディ、ドヴォルザーク、オッフェンバック、モーツァルトらの耳なじみのあるオペラのメロディーに、ケン・ヒルの書き下ろした歌詞をのせた曲が劇中にちりばめられ、怪人を取り巻く"愛するが故の悲劇"というテーマと、登場人物たちの人間味あふれるユーモラスな側面が丁寧に掘り下げられた力強いミュージカル・ドラマに仕上がっています。
今回の来日公演でファントム役を演じるのは、圧倒的な歌唱力を誇るジョン・オーウェン=ジョーンズ。ロイド=ウェバー版『オペラ座の怪人』で2000回以上ファントムを演じているロンドンミュージカル界の大スターです。既に何度かコンサート等で来日し、ミュージカルファンの心をつかんでいます。本公演が待望の来日ミュージカル作品の初主演となります。
ファントムとクリスティーンの切ないラブ・ロマンスが中心のロイド=ウェバー版とは異なり、ガストン・ルルーの原作小説のエッセンスを忠実に描いているミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版』。
ミュージカルファンはもちろんのこと、演劇は見るけど普段ミュージカルをあまり見ないという人たちにも是非見て欲しい作品です。
ミュージカル『オペラ座の怪人 ケン・ヒル版』 8月29日(水)~9月9日(日) 東急シアターオーブ
原作:ガストン・ルルー(「オペラ座の怪人」より) 脚本・作詞:ケン・ヒル 出演:ジョン・オーウェン=ジョーンズ(ファントム役)、ヘレン・パワー(クリスティーン役)
作品の詳細は公式サイトで。
演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。