観客の想像力を最大限にかきたてる世界観
このように『化粧』には多くの人物が登場します。しかし、舞台上の出演者は大衆演劇の女座長一人のみです。舞台上に鏡はないのに、あたかも鏡があるように舞台化粧をしていき、自分以外の登場人物がそこにいるように演じます。観客の想像力を最大限にかきたてるこの世界観は、役者の持つ技量が試される舞台ともなっています。
大衆演劇の劇中劇を演じるという多重構造に井上作品に欠かせない笑いと涙もふんだんに盛り込まれ、井上ひさし初の一人芝居にして至高の傑作戯曲です。
井上ひさしの戯曲が大好きな人はもちろん、今まで一度も井上作品を観たことがない人にも必ず満足していただける芝居です。
虚構と現実が交錯するスリリングなおもしろさと悲しさに浸ってみませんか。
こまつ座第103回公演・紀伊國屋書店提携・紀伊國屋ホール開場50周年周年 『化粧』
作:井上ひさし
演出:鵜山仁
出演:平淑恵
3月7日(金)~3月21日(金・祝) 紀伊國屋ホール
作品の詳細は公式サイトで。
出雲 あきら(いずも・あきら)
演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に20年出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。