本と、人と、であえる場所
大切な人にプレゼントする本を探していたり、悩みごとを解決するヒントを求めていたり。書店にはさまざまなお客さんが訪れます。思わずうなったのが、一人ひとりにぴったりの本をおすすめできる、森田さんの読書量と記憶力です。
たとえば、育児に悩みながらも話し相手がいなくて涙する若いお母さんに、離婚に向けて別居しはじめた「サレ妻」の元同僚に、妻を急に亡くしたというグレイヘアの男性に......。なぜこんなにもまんべんなく読んでいて、しかもとっさにすらすらと紹介できるの!? と感心しきりでした。
その後、夫の転勤が決まり、また別の書店に採用されることになった森田さん。あるとき、先輩から「ニュータイプ店員」の称号を授けられました。お客さんにしょっちゅう話しかけるところが、「アパレル店員のよう」だと。そのうえ、道やスーパーや電車で、見知らぬ人からものすごい頻度で話しかけられる「話しかけられ王」なのだとか。
自分から行って相手からも来る。だからいつも、自然と人の輪ができるのかもしれないですね。書店とは静かな場所で、ひと言も発さずに行って帰ってくるところだと思っていましたが、自分の中の書店観がひっくり返されました。
ズラーッと陳列された無数の本を前に、さてどうしよう......と悩むことはありませんか? そこに目利きの書店員がいて、話を聞き、選書してくれるとしたら、ぜひお願いしたいものです。
書店員とはこういうもの、という枠を柔軟に広げて自分らしくアレンジしたら、オンリーワンの書店員になっていた、という感じでしょうか。仕事でもなんでも、そこにオリジナルの価値をつけ足せたらいいですよね。
あなたがよく行く書店でも、小さなドラマは日々起こっているかもしれません。本との出合いと、人との出会い。どちらも楽しみになってくる、書店の新たな魅力に気づかせてくれる一冊です。
(Yukako)
『書店員は見た! 本屋さんで起こる小さなドラマ』森田めぐみ 著(大和書房)
■森田めぐみさんプロフィール
もりた・めぐみ/1981年茨城県生まれ。書店員。転勤族の夫とともに引越しをくり返している。現在は、夫、息子、娘、犬1匹、猫4匹と暮らしながら、東京の片隅の書店に勤務中。仕事で扱う重い本の箱に加え、犬猫のお世話で腰を痛めがち。好きなものは、家、動物、おいしいごはんとビール。苦手なものは、グミとキャラメル、ぼーっとすること。些細なことでよく笑いよく泣き、もういい大人なのに、ついふざけ過ぎてしまうことが悩み。「読んでもためにならないことを書く」をモットーに日々の生活をインスタグラムで綴っている。
画像提供:大和書房
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