連載の締めとなったのは、KAT-TUN亀梨和也さんのファンとしても知られる田辺さん(書籍では田辺さんの後、文筆家のひらりささんとの対談を収録しています)。藤谷さんが「それだ!」と心をつかまれたのが、田辺さんの「どうせ好きですし」というひと言です。
田辺さんも、近年の推し活ブームが過熱しすぎではないかと心配していらっしゃいました。でも、もし自分や推しに何かトラブルが起きて推し続けられなくなったとしても、どうせ自分はその人のことが好きなんだから、一旦距離を置いてから戻ってくればいいとおっしゃっていて。 何かあった時に絶望してしまうのではなくて、落ち着いたら帰ってきてまた応援するという、このバランス感覚がすごくいいなと思いました。「どうせ」ってネガティブに使われがちな言葉ですけど、これはポジティブですよね。達観というか、いい意味でのあきらめというか。 それに、もし本当にその推しから気持ちが完全に離れてしまって戻ってこなかったとしても、我々はどうせ他のものにハマるんですよ。来年くらいに(笑)。推し活が良かろうが悪かろうが、オタクはどうせずっとそんなことを繰り返しているんです。
そんなオタクの生きざまを裏づける、こんなエピソードが。藤谷さんには90代の親戚がいて、ときどき様子を見に行っているそう。その方が最近家族の看取りを終えて、なんと推し活に復帰したのです。昔好きだったコーラスグループが、まだ現役で活動中とのこと。
私もときどき付き添いとしてイベントに行っています。メンバーはもともと4人だったけれど、オリジナルメンバーは2人亡くなって、若いメンバーを入れて今は3人でやっているそうです。健康上の問題で杖をついたり椅子に座ることもあるけど、歌声はプロフェッショナルで。 そうそう、以前行ったコンサートでは、トークで亡くなったメンバーをイジっていて、他のお客さんはおそらく同年代で、推しとの重ねてきた年月がありますし身近な友達が亡くなるのは当たり前のことだからか、もうドッカンドッカン大ウケしてて、私だけが真顔に......なんてこともありました(笑)。 そんなふうに、イベントはなごやかでとてもいい雰囲気なんですが、帰ってから親戚が「今日は曲順がよくなかった」とか「今日はピアノが走ってた」みたいなことを言うんですよ。私、「えっ!?」って(笑)。セットリストへの愛ゆえの文句ってオタクあるあるじゃないですか! かくしゃくとしていて知的なおばあさまなんですが、それだけに「オタクってそれ一生やるんだ!?」という恐怖が......。でも、なんだかんだ言いながらも90代になっても変わらず推し続けていられるんだなと、勇気をもらえました。オタクのみなさん、長生きしましょう。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。
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