出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2017/1/16

東野圭吾の代表作 ミュージカル『手紙』が帰ってくる! 歌の力でより感動的に

ミュージカルだからこその力

この作品は、弟のために強盗殺人を犯して服役中の兄と、その弟が交わす"手紙"が作品の中心となっています。そのため、ストレートプレイや朗読劇のような手法の方が舞台化にはふさわしく、ミュージカルにするのは難しいようにも思われます。ところが、昨年上演されたミュージカル版は、手紙を歌で表現するなどミュージカルならではの手法を使い、原作のテーマ性をより深く伝えることができる作品に仕上がっていました。

11名の出演者達が兄弟のまわりを取り巻く様々な人間を演じ、美しいコーラスと共に物語が進んでいきます。兄と弟のすれ違いやもつれる感情は、時に二人のデュエットという形で表現され、それぞれの慟哭はソロになることもあります。オリジナル・ミュージカルをすでに何作も共に創ってきた脚本の高橋知伽江と作曲の深沢桂子が手掛けた珠玉の楽曲が、観客の心に突き刺ささり、歌のもつ力がさらに感動を大きくします。

誰にとっても他人事ではない、日常の中で起こり得る多くのテーマを持つ原作を、今作は見事なまでにミュージカル化しています。東野圭吾の熱狂的なファンは、舞台化された作品には時に厳しい評価を下しますが、本作は原作ファンの期待も裏切らず、高い評価を受けました。

この冬、是非、劇場に足を運んでみて欲しい1作です。


ミュージカル『手紙』

東京公演:1月20日(金)~2月5日(日)新国立劇場 小劇場
神戸公演:2月11日(土)~12日(日)新神戸オリエンタル劇場
原作:東野圭吾
脚本・作詞:高橋知伽江
演出:藤田俊太郎
作曲・音楽監督・作詞:深沢桂子
出演:柳下大、太田基裕(弟・直貴役ダブルキャスト)
吉原光夫、藤田玲、加藤良輔 他。

作品の詳細は公式サイトで。

出雲あきら 出雲あきら

演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に20年出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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  • A新国立劇場
  • 住所〒151-0071
  • 東京都渋谷区本町1丁目1番1号
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