出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2017/1/16

東野圭吾の代表作 ミュージカル『手紙』が帰ってくる! 歌の力でより感動的に

ミュージカル『手紙』

昨年1月、2003年に出版され直木賞候補となった東野圭吾の名作『手紙』がミュージカル化され、大変話題となりました。そして、今年、新たなキャストを加えての再演が決定しました。

本作は、ミステリーを多く手がける東野圭吾の作品の中では異質なもので、犯罪加害者の親族の視点に立って書かれ、深いテーマ性を内包した問題作です。2006年には山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ主演で映画化され大ヒットし、2008年には相葉弘樹主演で舞台化もされています。

物語は......。

両親のいない剛志と直貴の兄弟は、お互いに助け合って生きてきました。弟を大学に入れてあげたいという一心から、剛志はその学費ほしさで空き巣に入り、思いもかけず殺人まで犯してしまいます。

直貴は「人殺しの弟」という烙印を押され、日常の中で冷酷な差別に遭い、夢や希望を失っていきます。一方、服役している剛志は、たった一人の弟への想いをせつないまでに純粋に手紙に綴っていきます。しかし、その手紙がかえって弟を追いつめていることを知りません。

世間の差別が自分だけではなく妻や娘にまで及んだとき、直貴は兄を切り捨てる決心をします。弟から絶縁を言い渡された剛志は「自分は手紙など書くべきではなかった」と気づくと同時に、服役しただけでは償いになっていなかった現実に直面するのです......。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]ミュージカルだからこその力
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