出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2014/9/17

【第16回】夢の遊眠社の傑作『小指の思い出』再び 今もっともエネルギーある若手が野田戯曲に挑む

1970年代後半から1990年代前半にかけて、若者たちを熱狂させた劇団がありました。「劇団夢の遊眠社」、主宰は野田秀樹。私も熱狂した一人で、遊眠社の芝居を見ていなかったら演劇ファンにはなっていなかったかもしれません。

言葉遊びを巧みにつかって意味を重層化させる台詞まわしと、本来なら重なり得ない複数の物語が演劇的手法によって交錯する唯一無二の世界観が特徴で、その後の日本の演劇界に多大な影響を与えました。遊眠社は1992年に解散、野田秀樹はその後、NODA・MAPを立ち上げ現在まで公演を続けています。

その遊眠社の傑作の一つ、『小指の思い出』が野田秀樹の演出ではなく、若手演出家、藤田貴大の手によって上演されます。しかも主演はテレビに映画に引っ張りだこの勝地涼。完売必至の公演です。

主演は人気の勝地涼

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2005年の映画『亡国のイージス』で日本アカデミー賞新人賞を受賞、その後も演技派としてドラマ、映画、舞台など幅広く活躍する勝地涼。昨年のNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」では、前髪クネ男役として出演。全156話中わずか1話の出演だったにもかかわらず今までのイメージを覆す強烈なインパクトで話題騒然となり、今では彼の姿をテレビで見ない日はありません。舞台においても、蜷川幸雄演出作品や劇団☆新感線にも出演、コミカルな役からシリアスな役まで幅広い演技力には定評があります。

その勝地涼が本作の主演、「当たり屋」の赤木圭一郎を演じます。

お話の概要はこうです。車にわざとぶつかって金銭をせしめる「当たり屋」の赤木圭一郎は、場外馬券場のある四つ辻でカモを探している時に、同業の粕羽聖子と出会う。彼女は真実(まこと)の実のかわりに、不実の実という怪しげな白い実を売っていた。一転、舞台は中世のニュールンベルグの冬へ。そこには、1月から12月までの名前を持ち、凧に乗って空を飛ぶ聖子の息子達がいた。彼らは貴族の馬車にむかって、当たり屋をしていた。そこに、白い実の謎を追う刑事が追ってきて...。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]若き頃の野田戯曲の特徴が顕著に表れている
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