出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2014/1/21

【第4回】6年後には日本演劇界の中心になる注目株 劇団「柿喰う客」の妄想エンターテイメント力

2020年、東京でオリンピックが開催されることになりました。誰が開会式を演出するのか、早くも複数の著名な演出家の名前が取りざたされています。名前が挙がっているのはいずれも今、円熟期を迎えている人達ですが、できればオリンピックが開催される時に最も旬である人を起用すべきではないでしょうか。

私が是非推薦したい人に中屋敷(なかやしき)法仁(のりひと)という演出家がいます。6年後には間違いなく日本演劇界の中心人物になっている人です。その中屋敷が率いる劇団「柿喰う客」が1年半ぶりの新作を携えて下北沢・本多劇場に登場します。

一言でいえば"スタイリッシュ"

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「柿喰う客」は2004年に大学在学中の中屋敷が立ち上げた演劇集団で、基本的には中屋敷の演出作品を上演します。その演出のスタイルを一言でいえば"スタイリッシュ"。日本の古典芸能に関する造詣深く、高い演劇教養を武器に歌舞伎や狂言のような特徴ある動きや、スピード感のある台詞回しを駆使して物語を展開させていきます。

シェイクスピア作品を女優だけで演じる"女体シェイクスピア"シリーズが特に人気で、難しい題材も冴えわたるスタイリッシュな演出で、一瞬で観客の心を鷲掴みにします。最近は中屋敷の才能に注目した外部の劇団から演出の依頼も殺到しています。

しかし、「柿喰う客」の魅力は何といっても中屋敷のオリジナル脚本作品の上演です。"妄想エンターテインメント"と呼ばれる独特の作風で、演劇の虚構性を重視した圧倒的なフィクションの世界が展開されます。奉納神楽の要素も取り入れた前作『無差別』は脚本家に贈られる賞としては最高峰の岸田國士戯曲賞の最終選考まで残り、業界の注目を浴びました。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]キャストを変えた乱痴気公演は特に注目
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