話す前には、まず「立ち止まる」が正解。コミュ力不足に悩む人へのヒント教えます。
頭が悪くなる瞬間、頭がよくなる時間
■「怒っているとき」は、頭が悪くなる
サセックス大学教授の心理学者、スチュアート・サザーランドは著書『不合理 誰もまぬがれない思考の罠100』の中でこう述べます。
怒りや恐怖など強い感情にとらわれると、愚かな行動に走りやすい
要するに、怒っているときは、だれでも頭が悪くなるのです。
怒っているときに下す判断は、まず、間違っていると考えたほうがいいでしょう。
上司から叱責されたとき。同僚から無能だとみなされたとき。大勢の前で恥をかかされたとき。そういったとき、良い判断のできる人はほとんどいません。
実際、上司と喧嘩し勢いで会社を辞めて後悔した人を何人も見てきました。
頭のいい人は"キレること" "感情的になること" でどれだけ大きな損失を被るか知っています。
もちろん頭のいい人も感情的になることはあります。しかし、頭のいい人は感情的になったとき、すぐに反応するのではなく、感情をコントロールし、冷静になって考えるほうが、メリットがあることを知っていて、その術(すべ)を身につけているのです。
つまり、"話す前にちゃんと考える" ということは、感情に任せて反応するのではなく、冷静になることだ"と言い換えられます。
■キレないためのふたつの技術
では、どうすればキレずに冷静でいられるのか。
ポイントはふたつあります。
1 すぐに口を開かない
2 相手がどう反応するか、いくつか案を考えて比較検討する
2002年に行動経済学者でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは著書『ファスト&スロー』の中で、人間の思考には「早い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」があると述べています。
簡単に説明すると「早い思考(システム1)」はいわゆる直感的な思考で、「遅い思考(システム2)」は論理的な思考のことを指し、基本的に人間は「早い思考(システム1)」が優位にあるとカーネマンは言います。
つまり、すぐに口を開いてしまうと「早い思考(システム1)」の直感的な感情先行の発言をしてしまうのですぐに口を開かずに、自分の発言で相手がどう反応するかいくつかのシナリオを比較検討することで「遅い思考(システム2)」を働かせるのです。
カーネマンはこの複数のシナリオを検討して行動を決定することを「並列評価」と呼んでいます。
本書でお伝えする"話す前にちゃんと考える" ということは、カーネマンの言う「早い思考(システム1)」ではなく、どうやって「遅い思考(システム2)」を使って考えるか? ということなのです。
■愚かさを回避するための時間
頭のいい人は怒っているときだけではなく、うまくいっているときほど、リスクはないか? 見落としはないか? などと、冷静に考えることができます。頭のいい人ほど、感情的な自分に自覚的になり、冷静になれるのです。
もちろん感情を蔑(ないがし)ろにしろ、と言っているわけではありません。
むしろ、自分が素直に何を感じるか、何が好きで、何が嫌いなのか、心の動きをとらえることは、豊かに生きる上で重要なことです。
しかし、「口はわざわいの元」であり、話す前には十分に注意すべきです。場合によっては取り返しのつかない発言になることがあるからです。
何かを言いたくなったときほど、逆に口を閉じる。
"とにかく反応しない"ということが大事なのです。
黄金法則 その1 とにかく反応するな

安達裕哉さん
■安達裕哉さんプロフィール
あだち・ゆうや/ティネクト株式会社 代表取締役。1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が"本質的でためになる"と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。
画像提供:ダイヤモンド社
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