辛酸なめ子の東京アラカルト
漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが注目する東京のお出かけスポットやイベントを紹介。辛酸さんならではの視点、現地でのエピソードに思わずニヤッとしてしまいます。
2020/11/14

昭和初期の元銭湯が令和のカフェに映え リノベーション【辛酸なめ子の東京アラカルト#44】

自然と本音トークが出てくる場所

(ブルーベリーアイスとエチオピアのセットは980円。コーヒー2杯目から半額だそうです)

ブルーベリーアイスとエチオピアコーヒーのセットを頼みました。他には、キウイ&コスタリカ、湘南ゴールドみかん&ニカラグア、といったマリアージュセットが。舌の上でコーヒーの苦味とブルーベリーの酸味が溶けていきながら絶妙なハーモニーを奏でます。

メインのメニューがなんでアイスなのか少し疑問だったのですが、銭湯といえばお風呂から出てアイスが食べたくなるので、そういうつながりかもしれません。

(この空間にマッチした抜け感のある家具。この引き戸ごしの奥が建築事務所です)

本棚が建築関係の本ばかりだと思ったら、脱衣所の奥の浴室ゾーンはここのリノベーションを手がけた建築事務所のようでした。この仕事環境、リラックスしてアルファー波が出て、発想が次々わいてきそうです。事務所側を見ると男湯と女湯をへだてる壁が結構低いのにも、日本人の身長の変化と歴史を感じました。

隣のファッション誌撮影の方々は、番台に座ってみて「眺めが良いね」と楽しんでいました。「この前苦行に近い撮影があって......遠くに行くわけでもないのに朝2時集合で鬼って思いました」と、撮影裏話が聞こえてきます。

(空いていれば番台に座ってみる体験もできそうです。ガラスごしに「男」の表示が)

もしかしたら銭湯という裸になる空間にいると、心がオープンになって自然と本音トークが出てくるのかもしれません。私はひとりで座っていただけでしたが、次回はぜひ誰かとここで語りたいと思いました。

辛酸なめ子

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デ ザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

2

人気キーワードHOT

特集SPECIAL

ランキング RANKING