ミュージカル界の巨匠が自らプロデュース
今回の劇団四季の公演は、『キャッツ』『オペラ座の怪人』などの作曲で知られるアンドリュー・ロイド=ウェーバーが自らプロデュースし、2006年にロンドンのパラディアム劇場でオープンし大ヒットした演出版です。ロイド=ウェーバーは音楽家だった父親の影響から、10代の頃にロジャース&ハマースタインに魅せられたといわれています。特に『サウンド・オブ・ミュージック』をもっとも愛し、いつか自分自身の手でプロデュースし、ロンドンでヒットさせたいという思いを強く抱いていたそうです。
今回の演出版の特徴は、ナチス占領下のオーストリアの歴史的な混乱をきちんと表現し、トラップ一家の置かれている状況にリアリティを持たせた点にあります。舞台装置や美術に徹底的にこだわり、外と室内を対照的につくりあげています。外の風景には鮮やかな色彩を使用して山々などを曲線で描き、屋内は閉塞感を表現するため直線を多用し淡い色のインテリアを使用しました。これにより、主人公たちが経験する「囚われている」感覚、そして物語の後半で現れる大自然の存在が家族全員の「解放」された感覚を見事に表現することに成功しています。
オリジナルの舞台や映画の熱狂的なファンはもちろんのこと、『サウンド・オブ・ミュージック』を一度も見たことがない人も満足いただける作品です。この夏の思い出に、ご家族でご覧になってはいかがでしょうか。
ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』
東京公演 8月9日(日)~ロングラン 四季劇場 秋
音楽:リチャード・ロジャース
歌詞:オスカー・ハマースタイン2世
脚本:ハワード・リンゼイ ラッセル・クラウス
演出:ジェレミー・サムズ
出演:劇団四季
作品の詳細は公式サイトで。
出雲 あきら(いずも・あきら)
演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に20年出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。