【辛酸なめ子の東京アラカルト#68】エモさとエロスが渾然一体となったカオスな「大道芸術館」
伝説のSF秘宝館を再現した宇宙人のジオラマで異世界トリップ

(階段壁面に展示されている、不気味だけどどこか引き込まれるアート作品たち)
1階から3階までの階段壁面には「バッド・アート」と呼ばれる、キッチュでシュールな絵画などが展示されていて、独特のオーラを放っています。
館内は、「バッド・アート」に混じって、さり気なく大竹伸朗など有名な芸術家の作品も展示されています。
1階から3階に行くのが順路ですが、3階に足を踏み入れたら誰もが叫んでしまうくらい、異次元の光景が広がっています。
アセンションの反対、ディセンションしそうな、高次元とは言いがたいやばい宇宙人たちの実験室が......。こちらも鳥羽国際秘宝館・SF未来館から来た人形たちで、宇宙人が人間を捕獲して、体外受精させ、カプセル内で新しい人類を作ろうとしている試みが、人形たちのジオラマで再現されています。
SFなのでスペーシーなBGMが流れる空間。宇宙人が操作しているマシーンが、昭和のSFっぽいローテク感で癒されます。
でも、このフロアは1人で滞在するのはちょっと怖いです......。個人的には鳥羽のSF秘宝館にも行ったことがあるので、都築さんのおかげで人形たちとまた会えて感無量です。

(バーに美女がひとり佇んでいる......と思ったらオリエント工業のリアルドールでした)
2階に降りると、やっと人と会話できるバースペース「茶と酒 わかめ」が。でも、カウンターの周りにいる美女はよく見たらリアルドールでした。
肌の質感を保つため、ベビーパウダーでケアしているとか。なめらかで弾力がある肌にも触れさせていただきました。
バースペースは、見世物小屋に展示されていた絵画や、ピンク映画のチラシ、裏返すとエロい仕掛けの人形などが各所に展示。こちらのフロアもディープすぎて、時間があっという間に経っていきます。

(バースペースのリアルドールは新品だそうです。一緒に撮影もできます)

(2階に展示されていた「春画人形」は、裏返すと秘密の仕掛けが......)
女性のバストを揉むと水が出るオブジェがあったのですが、千葉から来たという20歳くらいの男子たちが嬉しそうにずっと触っていました。童心に返れる場なのかもしれません......。
アートが好きな外国人とか喜びそうなミュージアムですが、このあたりは料亭街なのでお座敷がはじまる前に芸者さんが来ることもあるとか。
そしてオープンしてそんなに経っていないのに、すでに海外セレブも何人か来たそうで......なんと世界の歌姫、デュア・リパもこの空間に大興奮していたとか。これは、かつてのロボットレストラン、チームラボに続いて海外セレブに大ブレイクしそうです。
円安や電力不足などこのところ日本の国力が低下しているのを感じますが、もしかしたらこの「大道芸術館」は、煩悩から国力を高めてくれるかもしれません。インバウンドの観光客で予約が埋まる前にまた訪れたいです。
辛酸なめ子
東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デ ザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。