辛酸なめ子の東京アラカルト
漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが注目する東京のお出かけスポットやイベントを紹介。辛酸さんならではの視点、現地でのエピソードに思わずニヤッとしてしまいます。
2019/9/ 2

表参道のプロヴァンスでプチトリップ【辛酸なめ子の東京アラカルト#30】

十年前の記憶が気まずさを救う

施術中に「ロクシタンの製品は何かお使いですか?」と聞かれて、ハンドクリームがあると答えたら「スキンケアではなにかお使いでしょうか?」とさらに尋ねられ、十年くらい前にイモーテルの化粧水にハマっていたことを思い出しました。

今はすっかり、グローバルなブランドではなくマニアックなオーガニックコスメを愛用していて遠ざかってしまいましたが、こうして改めて使うと良いですね。でもこの場では「イモーテルの香りはどうでしたか?」「普通によかったです」「効果はいかがでしたか?」「ハリがアップしたような......」と、十年前の記憶をなんとか呼び出して場をもたせるのに緊張感がありました。もしロクシタンの製品を全然使ったことがなかったら気まずいことになりそうです。

心地よい時間はあっという間に終わり、今回使った製品やおすすめアイテムについて説明を受けました。感動したのは、アフターにフルーツとヴァーベナティーが出たこと。換算したら1200円くらいになりそうです。

プロバンスの写真集を眺めながら、アフターのお茶を飲む優雅なひと時。そして自分の住環境との格差に涙

しかし棚や机に大量に置かれているプロバンス関係の写真集を眺めていたら、素敵すぎる豪邸や庭の写真だらけで如実に格差を感じずにはいられませんでした。

「フランスとか行ったことありますか?」「ありません......」

妙な敗北感から、自信を取り戻すため一階でコスメを買ったりお茶を飲んだりとプチ豪遊してしまいました。隣の席はいかにもお金持ちそうなヨーロッパ系の金髪ファミリーで、また格差感に拍車がかかりましたが、実際プロバンスに行ったら格差はこんなものじゃないですよね。

さりげなく高級感があるヴァーベナカフェにて。880円のロイヤルミルクティーをオーダー。ドリンクとスイーツのみで、1000円前後がメインの価格帯です

表参道のプチプロバンス体験で、精神的に鍛えられたというか、自分の身の丈を知ることができました。この思いを反動に地道に働きます......。

ロクシタンとして日本初のショップ、スパ、カフェが一体型になった店舗。側面の黄色い壁がインスタ映えするので記念撮影の人も多かったです

辛酸なめ子

1974年、千代田区生まれ、埼玉育ち。漫画家・コラムニスト。著書に、『消費セラピー』(集英社文庫)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『女子の国はいつも内戦』(河出書房新社)、『なめ単』(朝日新聞出版)、『妙齢美容修業』(講談社文庫)、『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)、『絶対霊度』(学研)などがある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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