無印ワールドに包まれる安心感
食品以外の商品のフロアでは、広い面積を生かして、布や籠などを大々的に展示したり、ペンやボールペンを壁一面の棚に並べたり、天井から掃除用具が下がっていたりと、シンプルながら素材感を打ち出した無印ワールドが各所で広がっています。
壁一面に並んだ筆記用具。展示の仕方で物欲が刺激されます。
2階から上はエスカレーターの横に椅子もあってありがたいです。服のフロアには、親子お揃いで上下ネイビーのデニムのマネキンが。こんな家族実際にいそうです。そしてよく見ると店内にはムジラーっぽい、シンプルなデニム系ファッションのお客さんが多いような。濃いネイビーのデニム素材のシャツに布のトートバッグ、布のトートバッグ、丸みを帯びた形の靴、といった典型的なおばさまも。
上のフロアは意識が高い感じで、6階にはギャラリーもありました。4月は、デザイナーズオブジェや、クリエイターが「デザインとは?」という問いに答えた紙などが展示されていました。1階の喧噪を超えてエスカレーターを上がっていくと、意識の高みに到達できます。6階には「WA」という和食店があり、こちらは結構穴場かもしれません。
地下から6階まで無印の店内を歩いてみて、心地よい安心感に包まれました。無印は、決して無印の範疇を出ないということを実感しました。コンセプトがしっかりしているからでしょうか。想定外の驚きがなくて、常に安定した感情を保てるのが無印が日本人に受け入れられている理由なのでしょう。日本人の死後行く霊界は無印テイストかもしれないと妄想。逸脱せず、でも必要なものは何でもある、無印の魅力を再確認しました。
掃除用具をこんな風に展示してもおしゃれになるのは無印だから......。
辛酸なめ子
1974年、千代田区生まれ、埼玉育ち。漫画家・コラムニスト。著書に、『消費セラピー』(集英社文庫)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『女子の国はいつも内戦』(河出書房新社)、『なめ単』(朝日新聞出版)、『妙齢美容修業』(講談社文庫)、『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)、『絶対霊度』(学研)などがある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。