学校では教えてくれない、「推す力」
最後に、中森さんの思う「アイドル」とは何なのかを聞いてみた。
「シャレになっちゃうけど、アイドルの中には愛(アイ)がある。アイドルは愛で成り立っているものなんじゃないでしょうか」
愛も虚構の一つだ。動物には愛がなく本能で繁殖するが、人は愛で結びついて子どもを産む。「愛は人類の偉大な発明の一つだと思いますよ」......では、その愛とは一体?
「昔、『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』という番組で、イカおやじっていう一般のおじさんが出ていたんです。若者が恋愛について討論する企画だったんですけど、後ろで黙ってイカ食ってたおじさんが、急にこう聞いたんですよ。『愛って何かわかるか?』。若者が『わかりますよ。好きってことでしょ?』って答えると、イカおやじはこう言うんです。『違うよ。好きな人を信じるってことだ』と」
スタジオはしんと静まり返り、翌週からイカおやじは番組に呼ばれなくなってしまった......という切ない後日談つきだが、これは核心をとらえた言葉なのではないかと中森さんは言う。
「愛とは信じること。僕もその通りだと思います。キリスト教の結婚式でも、2人の合意だけではなくて、神に誓いますよね。
人は何かを信じないでは生きられません。でも、誤った信じ方をすると大変なことになります。今もガザで、宗教が絡んだ戦争が起こっていますね。だから、信じることは決して綺麗なだけの話ではないんですが。
僕は、アイドルを推すことは『信じることの練習』だと思っています。アイドルという虚構を信じて、一生懸命応援したり、時には裏切られたと思って傷ついたりすることもあるでしょう。そうやって、学校では教えてくれないことを、感情を通じて教えてくれます。その先の人生で信じることを誤らないために、とても大事な経験だと思いますよ」
「推す力」とは、信じる力。推しをもつ全ての人の背中を、力強く押してくれる言葉だ。
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(東京バーゲンマニア編集部)
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