2024/1/25

「もっと気楽に生きていいんだ」南沢奈央さんを救った"居場所"とは

寄席は、一番自分らしくいられる場所

もし人生に落語がなかったら? とたずねると、「想像つかないな......」と悩みながら、「誰かと何かを共有する喜びを知れなかったかもしれないですね」とぽつり。

「もともと読書が好きだったので、落語に出合っていなかったら、一人で本を読んで満足するだけだったような気がします。寄席に行くようになって初めて、知らない人たちと同じ芸で一緒に笑う楽しさを知りました」

寄席では、落語家がお客さんとキャッチボールをしたり、リアクションを受けてアドリブをしたりと、その日限りの生の芸が繰り広げられる。広すぎないのも一体感が生まれるのにちょうどいい。「寄席ならではの空気感があるんです」と南沢さんは語る。

本書の中で、コロナ禍中の寄席支援クラウドファンディングに寄せられたファンのコメントが紹介されている。「寄席はこの世の楽園です」「寄席は心のオアシス」......南沢さんもこんなふうに思いますか? と聞き終わらないうちに、「思います!」と元気のいい返事が。

「寄席に入った人は、みんなニコニコして出てくるんです。『楽しくなかった』と思って帰る人は一人もいない、みんなが幸せになれる場所。まさにオアシスだと思います」

「寄席にはディズニーランドみたいな感覚で行ってます」「毎日でも行けます」。出てくる言葉から、寄席にいる南沢さんがどんなにわくわくした顔で楽しんでいるかが想像できる。

「寄席は、居場所と言ったら大げさですけど、一番自分らしくいられる場所だなと思います。何の気も遣わずに、リラックスして好きなだけ笑える場所です。

一人で寄席に行くと、つい隣にいる人に話しかけたくなっちゃいます。全然知らない隣の人と、同じものが好き、同じことで笑ってる、という感覚を共有できるだけで、すごくハッピーになれるんです」

さらに、ファン同士だけでなく、落語を知らない人とのコミュニケーションでも落語が背中を押してくれるという。

「誰かに『自分はこういう人間だ』と説明する時に、落語があるから話せているなと思います。『これなら自信を持って話せます』と言えるものです。読書も好きですが、他の人にはあまりないような自分だけのエッセンスなら、やっぱり落語ですね」

「落語は私のアイデンティティ。私を形成する一部です」とほがらかな顔で言う南沢さん。まっすぐな「好き」が、自分に自信をつけ、知らない人ともつながれる場所へと連れ出してくれたのだろう。

※この記事による収益の一部は、東京バーゲンマニアに還元されます。

(東京バーゲンマニア編集部)

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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