「推し落語家」はどんな人?
今やどんなジャンルでも「推し活」が盛り上がっているが、落語ファンも推しの落語家がいる人が多い。東京と大阪の寄席のほか、全国のホールで落語会も開催されるので、追いかけて回っている熱心なファンもいるそうだ。
南沢さんは、「落語家さんは声で好きになることが多い」とのこと。
「以前稽古をつけてくださったことがある、柳亭市馬(りゅうてい・いちば)師匠の声がすごくいいんです。つやのある声というか、発声が美しくて、まるで浪曲みたい。ご本人も歌がすごくお好きな方なんですよ」
確かに、話芸では声の存在感も重要だ。美しい声はもちろん、しゃがれ声や高い声など、個性的な声を持つ落語家も多い。「推し落語家さんはいっぱいいます」とはにかむ南沢さん。
同年代の落語ファンの友達との交流もある。本書では、立川志の輔さんが東京都下北沢・本多劇場で上演した「怪談牡丹灯籠」を2人で観に行き、「やばい!」「やばかった!」と興奮を分かち合ったという、微笑ましいエピソードが語られている。その友達も同じく俳優で、舞台で共演した際に意気投合したのだそうだ。
『今日も寄席に行きたくなって』南沢奈央 著(新潮社)
「私はそんなに友達が多いほうじゃないんですけど、落語好きの友達は増えました。俳優の友達は、この職業だからこその目線で落語を語れるのも楽しくて。『あそこの表情よかったよね』とか『あの言い回し最高だったよね』みたいな話で盛り上がってます」
さらに、年の離れた人とも共有できるのが落語のよさだ。共演した先輩俳優と一緒に寄席に行くこともあれば、南沢さんだからこそのこんな縁もある。
「友達と言ったら失礼ですけど、立川談春師匠は一番よくご飯に行く仲です。全友達の中で一番です(笑)。親のようでもあり兄のようでもあり、すごく可愛がっていただいています。仕事の相談をしたり、師匠が私の舞台を観てアドバイスをくださったりすることもあります」
落語ファンはどんな人が多いのか聞いてみると、「人見知りの人はけっこう多い気がします。私がそうだからそう思うのかな」。
「役者の友達もわりと人見知りなほうです。内気なんだけど、落語を聞くとすごく大きく笑うんですよ」
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。