日本橋高島屋 S.C.の江戸セレブ感【辛酸なめ子の東京アラカルト#21】
(画像はプレスリリースより)
日本橋がおしゃれに発展し続けています。COREDOが次々と生まれ、もう飽和状態かと思ったら、日本橋高島屋 S.C.がオープン。S.C.はショッピングセンターの略だそうです。もしかしたら玉川タカシマヤS・Cに勝てるかもしれない......下町住人としてそんな期待を胸に伺いました。
S.Cは新館という位置づけですが、ちょっと前に東館もオープンしていて(ポケモンカフェなどが入店)タカシマヤの資金力はすごいです。
S.Cはクラシカルな外壁でもともとある本館になじんでいます。1階で目を引くのは、ソファ席のある植物のお店。休憩や待ち合わせをしながらマイナスイオンで癒やされます。グリーンに囲まれて休憩していたら奥様同士のトークが聞こえてきました。ひとりが高校時代に学園のマドンナだったらしく、延々とモテ自慢をしていました。サッカー部の男子から電話がかかってきたとか、ラジオのリクエストで告白されたとか......。植物に囲まれた空間で心が解放されるのでしょうか。
1階の一角にはいつもすごい並んでいるパン屋さん「365日と日本橋」があります。買えないまでも外からガラス越しにパンを眺めていたら、デュヌ・ラルテのパンのラインアップに似ている気が。検索したらやはりデュヌ・ラルテでシェフを務めていたシェフが独立して作ったお店だそうでした。
いつも並んでいるパン屋さん「365日と日本橋」。売り切れていたら新丸ビル地下のデュヌ・ラルテに行くのもいいかもしれません。
「1階に食べ物屋さんがあるの珍しいね~」
おにぎりやサンドウィッチなどの店舗もあるので、熟年夫婦の指摘に、なるほどと思いました。そしてこの施設、場所的に年齢層高めです。新館と本館を行き来するお客さんも多く、集客的に相乗効果になっているようです。
安定感漂う客層。人生が順調な大人が集っているようです
「お客様は、すぐそこなのよっていう方が非常に多いですね。昔ながらの大都会ですよね」
2階の洋服屋さんで店員さんがお客さんに話すのが聞こえてきました。「庭って言ったら言いすぎですが、近いです」と、妻の試着待ちの男性客は余裕っぽく答えていました。日本橋の住民の方々には手堅さが漂っています。そして買い物する時は徹底的に吟味するようです。奥様が3着くらい試着して結局何も買わずに店を出ていました。
この施設のブティックの品物のラインアップは、シックで高級なものが多い印象です。セレクトショップも、靴が10万円前後のクラスだったり......。日本橋マダム、二子玉マダムに負けていないかもしれません。
2階のファッションフロア。通路が広くてゆったりしている上に植物まで植えられています。
価格帯的に手が届かない洋服屋を抜けて、5階の文房具のお店へ。「タッチアンドフロー」は、紙質にもこだわったノートや、万年筆など素敵な文具が並んでいます。万年筆の試し書きを見たら、さすが日本橋の人は「ありがとうございます」「お世話になっております」とか丁寧な語句を書いていました。着実な人生のヴァイブスを感じます。
タッチアンドフローの万年筆試し書き。丁寧で美文字が多いです。思わず万年筆を買ってしまいました。
地下と1階にはデリや食べ物やさんも充実しています。成城石井と紀伊国屋とディーンアンドデルーカが揃っているなんて! 興奮して食材買いまくりました。服が買えなくて物欲を発散できなかったぶん食欲で......。
1階の、オージーブランチのお店「N2ブランチクラブ」にて、チキンのシュニッツェル1500円。おしゃれでヘルシーでおいしくてテンション上がりました。
1974年、千代田区生まれ、埼玉育ち。漫画家・コラムニスト。著書に、『消費セラピー』(集英社文庫)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『女子の国はいつも内戦』(河出書房新社)、『なめ単』(朝日新聞出版)、『妙齢美容修業』(講談社文庫)、『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)、『絶対霊度』(学研)などがある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。