2014/11/ 5

映画「祝宴!シェフ」チェン・ユーシュン監督に聞く/台湾料理と文化を一度に味わえる映画

台湾映画「祝宴!シェフ」が2014年11月1日公開された。1990年代、「熱帯魚」(94)、「ラブゴーゴー」(97)などのヒットを飛ばしたコメディーの名手、チェン・ユーシュン(陳玉勳)監督16年ぶりの新作だ。今回のテーマは料理。伝説の料理人を父に持つ娘が、究極のメニューを追う姿を描く。監督は「台湾には素晴らしい文化が残ってることを知ってもらいたかった」と語った。

台湾ではかつて祝い事があると「総舗師(ツォンポーサイ)」と呼ばれる料理人が出張。屋外宴会「辦桌(バンド)」を取り仕切ったという。料理人は調理器具のみを持参。与えられた食材、宴会のテーマでメニューを考え、出席者と主催者を満足させた。今回の作品の舞台は南部の町・台南。数々の美食が笑いとともに登場し、台湾料理と文化を一度に味わえる映画となっている。

「喜劇の監督」と言われるようになったが、ほかのジャンルも撮りたい

──台湾伝統の食文化の一つ「バンド」を取り上げた理由はなんでしょうか。

私も小さいころ、よくバンドの祝宴に連れて行ってもらった。当時の台湾は今のように豊かではなく、ごちそうを食べる機会もあまりなかったが、祝宴がある時はおいしいものをお腹いっぱい食べられた。バンドには自分自身の幼いころへの郷愁、懐かしい気持ちが反映されている。今の台湾はいろいろなことが統一化され、レストランも増え、出張料理の習慣も衰退しつつある。台湾には素晴らしい文化が残ってることを、みなに知ってもらいたかった。

──個性的で楽しい料理人がたくさん登場する。モデルは特にいるのか。

私の想像が生んだキャラクターだ。彼らの姿を借り、映画界で出会ってきた先輩、監督たちを描写したかった。

──具体的にどんな監督たちですか。

いろいろな人物を混ぜてつくった。ホウ・シャオシェン(侯孝賢)、エドワード・ヤン(楊徳昌)、アン・リー(李安)、ワン・トン(王童)、ワン・シャオディー(王小棣)、ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)......彼らが映画界に果たした功績に敬意を込めて描いた。私は長く劇映画から遠ざかっていたので、今回はいろいろな困難があった。主人公の女性は出会った人たち、先輩の心意気と腕を借りながら夢に近づいていく。私も彼女と同じ。映画界の大先輩の経験を借りて、一つのことを成し遂げたいと思った。

──喜劇をずっと撮っているのはなぜですか。

コメディーばかり撮る監督と思われたくないんだ。最初ワン・シャオディー監督の会社に入りコメディーに出合った。助監督としてついたツァイ・ミンリャン監督の初期作品もコメディーだった。CMを撮るようになり、ほとんどがコメディー・タッチだった、習慣的にそうなり、周りからも「喜劇の監督」と言われるようになったが、ほかのジャンルも撮りたいと思っている。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

[続き]いつのまにか16年たっていた
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