「ひまわり学生運動の現場に行って映画を上映した」
――「ひまわり学生運動」についてどう思われますか。
映画が公開されてから、こんなに早く再び学生運動が起きるとは思ってもいませんでした。撮る前に社会にストレスが大きくなってきているとは感じていました。学生運動に限らず、何か闘争が増えるのではないか、と懸念していたのです。ひまわり学生運動が起きた20日間余り、私もしばしば現場へ行って映画を上映したり、学生や市民と話しました。上映活動を通じていろいろな人と出会い、あの場所で起きたことを目の当たりにしました。実際の人生は芝居よりもすごいし、芝居は実際の人生を映し出す鏡のようだと思いました。
たとえば、ある女子学生が学生運動の現場で電話をしながら泣いていました。「ボーイフレンドに二股をかけられた」とケンカしていたのです。その姿を見た時、彼女の境遇は林美宝とまったく同じだと感じました。林美宝が沈黙を選んだのに対し、彼女は大声で口論することを選んだわけです。また、ゲイ向けの出会い系アプリで「ある警官が自分との出会いを求めていると知った」という男子学生もいました。実に面白いと思いました。
今回の学生運動に参加した人々が、この映画のように当初の志を忘れてしまわないよう願っています。今の情熱、街で闘争に参加した理由を記憶にとどめておいてほしい。そうすることで、台湾はさらによくなっていくに違いないと思うからです。
――影響を受けた映画監督は誰でしょう。
その時によって回答は違ってきます。質問を聞いて私が思い出したのは国際的な大監督ではなく、最初に一緒に仕事をしたイー・ツーイェン(易智言)監督でした。グイ・ルンメイのデビュー映画「藍色夏恋」(02)の監督です。彼との付き合いは長く、もう10年以上。彼が頭に浮かんだ理由は、グイ・ルンメイが出ているからです。
私はあまり専門的な訓練を受けたことがありません。映画の見方もほかの監督とは違っていて、たいていただ鑑賞しているような感じ。作品を深く分析することもありません。イー・ツーイェン監督からは、撮影技術だけではなく、映画を製作する姿勢、仕事に対する姿勢、慎重で真摯な態度など、たくさんのことを教わりました。監督はとても大きな責任を負っている、ということも。
彼とよくお酒を飲みに出かけました。カラオケも好きで、特に「自在」という曲を好んで歌っていました。彼から受けた影響の中で特に大きなものは「映画を撮る時は自在であれ」というアドバイスです。「厳格と自在の間でバランスが取れるように」と。映画の撮影や創作活動を行う時、自分が自在でリラックスしていれば、できあがった作品は形にしばられることなく、ロマンチックな雰囲気を醸すものとなります。それでこそ創作であり、本当の自在だというのです。仕事に対する姿勢という点で、イー・ツーイェン監督からは多くの影響を受けました。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。