「日本では長い間、大きな運動が起きていませんね」
――台湾での公開時、マスコミや観客から受けた印象的な反応を教えて下さい。
上映期間中、監督は映画館へ行って座談会やサイン会を行います。ある日の遅い回でのことです。一人の観客がサインを求めてきたのですが、ひと言も言葉を発することなく、私に「ありがとう」と書いたメモを差し出してきました。背が高く、ハンサムな男子学生でした。彼が泣いているように見えたので、私は言葉を交わしませんでした。メモを見た時、彼が何に礼を言っているのか分からなかったのですが、あの時泣きながら映画館を出て行った観客は、おそらく映画の中に自分の姿を見つけたのだと思います。映画は鏡のように、見る人の人生を映し出しますからね。
もう一つ印象深いことと言えば「ひまわり学生運動」です。現場に行って初めて分かったのですが、多くの学生がこの映画を見て学生運動に参加したようです。かといって、この作品が偉大な力を持っているわけではありません。彼らの心の中には社会に対する熱い思いがあったのに、それを表に出す機会がなかっただけなのです。私は映画に描かれた時代が観客を感動させ、街に繰り出させることになるとは思ってもいませんでした。また映画を見たという学生は、私に「もうすぐ卒業するのですが、自分も(リディアン・ヴォーン演じた)王心仁のようになってしまうのではないか、と心配です」と語っていました。
――最後に日本の観客にメッセージをお願いします。
この映画のとても重要なテーマは、すべての人が自由を求めること、自分の感情と心を自由にすることです。私は台湾の学生運動の歴史に関する書籍以外に、日本の安保闘争時代の小説を何冊も読みました。村上春樹や村上龍など、多くの日本の作家が学生運動の様子を描いています。闘争のテーマは台湾とは違いますが、日本の小説で描かれた学生運動と青春群像は、随分前の時代のことではありますが、私に大きな啓発を与えてくれました。
「GF*BF」が描くのは単なる一つの事件ではありません。私は「青春の解釈」という点で、日本の小説に大きく影響されました。この映画をご覧になった皆さんには、日本の小説が私に与えた影響を感じてもらえるのではないでしょうか。日本では長い間、大きな運動が起きていません。社会に対して冷ややかになり、政治に失望しているため、社会問題に無関心になったからだとされています。観客の皆さんには、この映画からパワーを得て、自分の心や人生が本当に自由なのか、見つめ直してほしい。皆さんの心や愛が自由になるよう願っています。
「GF*BF」(2012年、台湾、原題:女朋友。男朋友)
監督:ヤン・ヤーチェ
出演:グイ・ルンメイ(桂綸[金美])、ジョセフ・チャン(張孝全)、リディアン・ヴォーン(鳳小岳)
2014年6月7日(土)、シネマート六本木、シネマート心斎橋ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。