2013/9/24

映画「ウォーム・ボディーズ」/ゾンビが人間に恋するハートフル映画 恋の力でゾンビが変わる!?

世界の終わりが近い近未来。謎のウイルスで人類の大半は死んでしまい、街にはかつて人間だったゾンビがあふれていた。生き残った人間は高い塀で囲まれたシェルターの中、武装して生き延びていた──。

アイザック・マリオンの原作を「50/50 フィフティ・フィフティ」(11)のジョナサン・レビン監督が映画化した「ウォーム・ボディーズ」。ゾンビが人間に恋する一風変わった作品だ。恋するゾンビ"R"には「ジャックと天空の巨人」(13)のニコラス・ホルト。Rに愛される人間ジュリーに「アイ・アム・ナンバー4」(11)のテリーサ・パーマー。ジュリーの父でゾンビ撲滅に執念を燃やすグリジオ大佐をジョン・マルコビッチが演じる。

話せないゾンビ気持ちを数々の名曲で代弁

映画はかつて人間だったRの独白で幕を開ける。空港に住みつくゾンビたちは、かつての記憶に導かれるようにロビーを徘徊している。Rには親友のおじさんゾンビ"M"(ロブ・コードリー)がいる。空港にはゾンビのなれの果て=骨だけになった"ガイコツ"がいた。ゾンビの体を食い荒らす凶暴な怪物だ。

Rたちはある日、ゾンビのテリトリーに入り込んだ若者たちを襲撃する。Rは青年ペリーを襲い、脳みそを食べて彼の記憶を追体験。子供のころから青年期へ......ガールフレンドとの甘い恋を追体験するR。すると目の前にショットガンを構えた女の子が現れた。彼女こそペリーの記憶に登場した恋人ジュリー(テリーサ・パーマー)だった。Rはジュリーに一目ぼれ。止まった心臓が再鼓動するような衝撃を感じた。Rはほかのゾンビに気づかれぬよう、ジュリーを自分が住むジャンボ機に連れていく。

ゾンビ映画の原点となったジョージ・A・ロメロ監督「ナイト・オブ・リビングデッド」(68)から45年。今ではホラーから恋愛ものまで、ゾンビ映画はさまざまに枝分かれした。今回はゾンビが人間に恋する"ハートフル"ゾンビ映画だ。ゾンビ同士が意思疎通する点が新たな試み。恋の力でゾンビが人間らしさを取り戻す、前向きな物語だ。

ゾンビと人間の禁断の恋。主人公二人の名前、バルコニーでの告白、人間とゾンビの和解など、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」が随所に引用されている。話せないRの気持ちは数々の名曲で代弁。従来のゾンビ映画と一味も二味も違う趣となった。根底できちんとロメロ監督の世界観を受け継ぎ、恋愛要素も絡めている。ゾンビ映画ファンはもちろん、苦手な人にも楽しめる口当たりのよい作品に仕上がった。


「ウォーム・ボディーズ」(2013年、米国)
監督:ジョナサン・レビン
出演:ニコラス・ホルト、テリーサ・パーマー、ロブ・コードリー、デイブ・フランコ、アナリー・ティプトン
2013年9月21日、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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