辛酸なめ子の東京アラカルト#4 標高も意識も高いヨガレッスン
虎ノ門ヒルズのアンダーズ東京というセレブなスポットで毎週ヨガのクラスが行われているのを知り、ヨガ意識を高めるために行ってまいりました。
集合時間が6時50分......ということはいろいろ逆算して6時に家を出ないとならず、5時起きです。日曜日に5時起きできる参加者はどれだけヨガ上級者なのでしょう。カラスがゴミを突き、鳩同士が喧嘩する早朝の街を出発し、虎ノ門ヒルズの51階へ。実はこのフロアには更衣室とかスパ、スタジオなどあったんですね。エマニュエル夫人みたいな藤のゴージャスな椅子が並ぶ待合室で、早くもテンションが上がります。
ゴージャスな控え室。この空間と景観にテンションが高まりました。
今回は女性8割といったところ。中には89歳のお元気な男性もいました。5時起きも問題なさそうです。会社を経営している的な会話が聞こえてきたので、場所柄セレブな方も多いのでしょうか。インドに行ってきた話をさり気なくしてヨガ上級者を匂わせる方も。そして夕方のヨガクラスでは参加者同士、挨拶以上の会話をするなんてなかなかないのですが、早朝は人の心をオープンするのか、社交の輪が芽生えています。
東京らしい曇り空の下、だんだん激しくなるセッション
ヨガマットがしかれたルーフトップ。人数も多すぎず少なすぎずちょうど良いです。参加費は 4500円 (税・サ込) 毎週日曜日 午前7時から8時まで。 9月24日(日)まで開催。
時間が来たのでルーフトップバルコニーへ。ピンク色のヨガマットが並んでいます。スモッグで空がそれほど青くはなかったですが、東京タワーが見えて、開放感あります。インストラクターの先生がiPhoneで音楽を流しながらさっそくヨガスタート。前屈や四つん這い、ねじりなどゆったりしたポーズから、自然に足を上げたりと運動量が多めになってきます。片足立ちの木のポーズでは、皆さん足を高めの位置にしてバランスを取っていてさすがでした。すごいヨガ意識の高い男性がいて、ひじの上で斜めに体を支えたり上級のポーズを繰り出しています。私の体の硬さは、隣で時々うつぶせ状態のまま動かない高齢の男性と良い勝負です。寝起きというのもありますが......。
他の人がだいたいできていたのは「カラスのポーズ」とういうもの。四つん這いから両足を上げるのですが、その時に肘の外側に足をひっかける感じで静止するという......。下半身が鈍重でなかなか上がりません。終了後、ひとり自主練して一瞬だけ上がりましたが、単にジャンプしただけという説も......。
カラスのポーズを練習。一瞬だけ浮くようになった気が......。
また、途中座って呼吸をゆっくりしている時、先生が「倒立の練習をしたい方は目を合わせてください。サポートします」とおっしゃったので、倒立なんて生まれてこのかたできた試しがない私は固く目をつぶっていました。時折「わ~すごーい」」「きれい!」「できた~!」といった歓声が聞こえてきます。もう大丈夫だろうと思って目を開けたら、先生と目が合ってしまいました。「やりましょう」
先生のヨガ圧に逆らえず、他の方々が生暖かく見守る中、倒立の特訓がはじまりました。「足をもうちょっと前に」「蹴り上げて!」重い下半身が虚しく宙を蹴り上げ、数十センチくらいしか上がらないまま、ドサッと落ちる、の繰り返しです。「これ以上やると時間が......」とレッスンを中断していることが気になって申し上げると「大丈夫。それぞれ挑戦することがあるから」と、先生。しばらく、宙を蹴り、無様にあがく姿を衆人に晒し、結局逆立ちはできませんでした......。「上げたい。今度うちのスクールに来て続きをやりましょう」熱意あふれる素晴らしい先生の期待に応えられず申し訳ないです。
最後はシャバーサナ(屍のポーズ)でリラックスして終わり、「がんばった自分をほめてあげましょう」と、先生。ホテルのスタッフが運んできてくれたジュースがおいしいです。
このアンダーズ東京のルーフトップに今後パーティで訪れることがあったら、「ここで逆立ちの練習したっけ......」と語れる、そんなエピソードができただけでも良かったです。究極の都会人みたいな体験ができました。
1974年、千代田区生まれ、埼玉育ち。漫画家・コラムニスト。著書に、『消費セラピー』(集英社文庫)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『女子の国はいつも内戦』(河出書房新社)、『なめ単』(朝日新聞出版)、『妙齢美容修業』(講談社文庫)、『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)、『絶対霊度』(学研)などがある。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。