新体制のゆうばり映画祭 オフシアター・コンペ受賞作に高校生作品も
北海道夕張市で開かれていた第26回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭は2月29日、5日間の日程を終えた。メーン会場の変更で移動が不便になったことや宿泊施設の不足などが影響し、動員数は1万3650人と昨年比95%にとどまった。ただ、公開直前の話題作の上映や各種イベントは盛況で、来年以降の開催にも弾みをつけた。
高校生監督も受賞
28日に行われた授賞式では、ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のグランプリが小林勇貴監督の「孤高の遠吠」に、インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門のグランプリが石谷恵監督の「かたすみの鱗」に贈られた。
オフシアター・コンペティション部門は新たな才能の発掘を掲げるが、今年は現役高校生の松本花奈監督がメガホンを取った「脱脱脱脱17」が審査委員特別賞とファンタランド大賞(観客賞)の作品賞をダブル受賞。受賞作は34歳になっても高校生をしている男と嘘泣きが得意な女子高校生が、互いに心を開いていきながらひとまわり成長する姿を描く。10代のフレッシュな感性が光る一方、人間を見つめる視線は高校生らしからぬ冷静なもの。今後が楽しみでもあり、末恐ろしくもある新鋭の誕生だ。
今年は映画祭事務局のメンバーが一新された。昨年までフェスティバルディレクターの肩書だった澤田直矢氏が実行委員長となり、音響・照明などの技術スタッフとして長く映画祭にかかわってきた深津修一氏がプロデューサーとして加わった。
1990年の第一回からのメーン会場だったアディーレ会館(旧市民会館)が老朽化のため昨年3月に閉館し、今年は開催が危ぶまれる状況だった。夕張市内には映画館はなく、市の文化スポーツセンターは使用料が高額で、代わりの会場探しは難航した。そこで浮上したのが、閉校した高校の校舎を再活用した宿泊施設「ひまわり」の体育館だった。
最大で約600席の客席が確保できる点は前会場とそん色ないが、映画を鑑賞する空間としては映像や音の質に問題がある。そこで、400インチの大型スクリーンを設置するために舞台の奥行きを前面に拡張し、音の残響を軽減するために床にカーペットを敷き詰めて幕で覆った。できるだけ費用を抑えなければならないという制約もあったが、メーン上映館に耐える設備をつくることができた。
深津プロデューサーは札幌市内で映像関連会社を経営する。プロジェクション・マッピングをいち早く手がけてきた実績や、映画製作の経験もある。これまでに大地康雄企画・主演の「じんじん」(2013年公開)や「エクレール・お菓子放浪記」(2011年公開)といった地域発の映画を製作してきた。
深津プロデューサーは「ゆうばり映画祭のブランド価値は北海道民が思っている以上に大きい。映画祭を50年、100年と続けていくために、無理なく世代交代ができるシステムづくりをすることが自分の役割」と話す。赤字運営を解消するため、支出の見直しやスポンサー探しは急務。新戦力が加わって映画祭は新たな時代を迎える。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。