2015/8/ 4

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015の見どころ 禁断の恋を描く正統派メロドラマ「うつろう」が出品

デジタル映画に特化した映画祭「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015」が、2015年7月18~26日に埼玉県で開かれた。コンペティション部門に出品された日本映画「うつろう」は受賞は逸したが、年齢差のある男女の恋愛を古典的なメロドラマの手法で描き切り、格別な印象を残した作品だ。

ぜひとも劇場公開してほしい

15歳の男子中学生と、35歳の独身女性。誰が考えても釣り合わない、無理のあるカップルである。それは本人たち自身も知っている。だから彼らは公然と会ったりしない。密会場所は女性の部屋。少年は女性に絵画の個人教授を受けていた。幼少時、公園で写生をしていた女性の絵を汚したことがきっかけで、絵を教わることになったのだ。

成長し色気づいた少年は女性に恋をし、誘惑し、ついに関係を持つ。2人の関係を知るのは、自分たちも秘密の恋をしている級友のカップルのみ。しかし、ある事件が起こり、2人の交際は両親の知るところとなる――。

次から次へと2人を襲う不運。吹きまくる逆風。あざといまでの悲劇的展開は、メロドラマの真髄というべきか。少年が資産家夫婦の息子で、女性が貧しい掃除婦という格差、突如知らされる女性の暗い過去も、実にメロドラマ的。光と影を強調したクライマックスの映像や、全編を彩る悲愴感あふれるBGMも効果的だ。

監督の久保裕章は、メロドラマの復活を目指し、埋もれた旧作を上映する運動を展開している。メロドラマが心底好きで、熱心に研究したのだろう。これが初長編とは思えぬ熟練の語り口にしたたか酔わされた。ぜひとも劇場公開してほしい逸品である。


「うつろう」(2014年、日本)

監督:久保裕章
出演:横山真弓、大内陸、高橋綾沙、高田優輝、内田量子、佐藤貢三、金橋良樹、万田邦敏
映画祭の詳細は公式ホームページまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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