2015/7/21

映画「Mr.タスク」/人間とセイウチを融合させた「セイウチ人間」を作ろうとする老人の狂気

インターネットサイトを運営するウォレス(ジャスティン・ロング)。投稿動画に映った片足少年に会うためカナダを訪れたが、少年はすでに自殺していた。立ち寄ったバーで元船員の老人の話を聞きつけ、「面白いネタになるかもしれない」と人里離れた家を訪ねる──。

ケビン・スミス監督、主演のホラー映画「Mr.タスク」。人間とセイウチを融合させた「セイウチ人間」を作ろうとする老人の狂気、実験台にされた男の悲劇を描く。監督によるとアイデアの元はネット広告。過去にセイウチと漂流した男が「1日2時間、セイウチの着ぐるみを着て、セイウチに成り切ってエサをもらう人」を募集していたという。

ジョニー・デップと実の娘、リリー=ローズ・メロディ・デップも出演

人間と生物の「合体」は、繰り返し映画で描かれてきた。「蠅男の恐怖」(58)、そのリメイク作品「ザ・フライ」(86)。狂った研究者が人間の口と肛門を数珠つなぎにする「ムカデ人間」(10)もあった。今回は妄想にとりつかれた男が手術で「セイウチ人間」を作ろうとする。

一見きわもの的な作品だが、語り口は古典的だ。ウォレスが老人にセイウチの思い出を聞くまでは、「チャーリーとチョコレート工場」(05)の原作者、ロアルド・ダールの小説を彷彿させる。行方不明になったウォレスを恋人のアリー(ジェネシス・ロドリゲス)、友人テディ(ハーレイ・ジョエル・オスメント)、探偵(ジョニー・デップ)が探すくだりはヒッチコック監督の「サイコ」(60)を思わせる。

全編に恐怖、狂気、黒い笑いが満ちた作品。老人のハワードを演じたマイケル・パークスの二面性ある怪演が見ものだ。人を傷つけるのが平気なウォレスに天罰を下し、人生を奪う狂気の老人。クエンティン・タランティーノ作品の常連パークスに監督が敬意を捧げるため、「キル・ビル」(03)をまねたシーンも登場する。

残酷なシーンが続く中、探偵役のデップがとぼけた演技を披露する。実の娘のリリー=ローズ・メロディ・デップもちらりと顔を出す。奇想天外な発想と黒い演出、俳優の振り切れた演技が、観客の予測を難なく超えていく作品だ。


「Mr.タスク」(2014年、米国)

監督:ケビン・スミス
出演:ジャスティン・ロング、マイケル・パークス、ハーレイ・ジョエル・オスメント、ジェネシス・ロドリゲス、ジョニー・デップ
2015年7月18日(土)、新宿シネマカリテほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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