2014/9/ 6

映画「フライト・ゲーム」/乗客146人すべてが容疑者 計算しつくされた演出が光る極上の娯楽作品

リーアム・ニーソン、ジャウム・コレット=セラ監督、製作のジョエル・シルバーが、「アンノウン」(11)に続いて再び組んだ「フライト・ゲーム」。植物学者が巨大な陰謀に挑んだ「アンノウン」と一転、"空飛ぶ密室"=飛行中の旅客機が舞台の犯罪スリラーだ。

身分を伏せて旅客機に乗り込む航空保安官のビル(ニーソン)。たばこの火を借りる男。洗面所で話しかけてくる男。携帯電話に夢中で搭乗を妨げる男。ビルの目にさまざまな乗客が飛び込んでくる。監督は彼らをビルに意味ありげに接触させ、これから何かが起きることを匂わせる。離陸後、ビルは携帯で匿名メールを受信する。送信者は「乗客の一人」を名乗り、「1億5000万ドル出さなければ、乗客を20分ごとに一人殺す」と脅し始めた。

外へ逃げられない旅客機で起きた予告連続殺人事件。乗客146人すべてが容疑者であり、被害者になる可能性がある。さらに、指定された金の振込先がビルの口座だったことから、地上の保安局員はビル本人を疑い始める。予告通りに20分起きに殺人が起き、焦ったビルは強引に乗客を調べ始め、反発が機内に広がっていく。

クライマックスは刺激的要素が満載

米同時多発テロの影響を感じる作品だ。ビルは冒頭、空港ロビーに座る中東系の男に疑惑の目を向ける。機内ではパニックに陥った乗客たちが、容疑者を捕らえようと一斉に動き出す。同時多発テロに巻き込まれた旅客機を描いた「ユナイテッド93」(06)にも登場した描写である。

時代を象徴する小道具として携帯電話が使われる。容疑者は携帯メールでビルを脅迫し、乗客は携帯動画をインターネットにアップする。現代生活に欠かせぬ便利な道具が人を振り回し、独特の緊張感を生み出している。

さらに後半、爆発物の存在が明らかとなり、パニックに拍車がかかる。爆発と墜落の恐怖が合わさり、クライマックスは刺激的要素が満載。ビルはそもそも酒とたばこが手放せず、人間的弱さを持った主人公だ。思わぬ事態に翻弄されつつ、孤軍奮闘して逆境を乗り越えていく。

謎の女性を演じるジュリアン・ムーア、一人で飛行機に乗る少女など、スパイスもぴりりと効いている。計算しつくされた演出、俳優の絶妙な演技。極上の娯楽作品に仕上がった。


「フライト・ゲーム」(2014年、米国)

監督:ジャウム・コレット=セラ
出演:リーアム・ニーソン、ジュリアン・ムーア、スクート・マクネイリー、ミシェル・ドッカリー、ネイト・パーカー
2014年9月6日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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