映画「ドン・ジョン」/2次元の女性しか愛せない超イケメン ポルノ中毒男に"リアルな愛"は訪れるのか―。
体を鍛えて完ぺきなルックスを誇るジョン・マテーロ(ジョゼフ・ゴードン=レビット)。女と仲間と家族と車をこよなく愛すプレーボーイだ。仲間は彼をスペインのモテ男"ドン・ファン"と、"首領(ボス)"にひっかけ、"ドン・ジョン"と呼ぶ。
毎夜クラブに通い、女を引っかけ、お持ち帰りの日々。現実の女では満足できず、インターネットのポルノ動画を見て欲望を処理する中毒者である。一方で週末には家族と会い、教会でざんげし、神父の言葉を勝手に解釈し、自己満足している。
何もかも完ぺきを求めるジョンの前に、理想的な女性バーバラ(スカーレット・ヨハンソン)が現れる。美しくゴージャスなバーバラは、恋愛映画の王子様との恋を夢見る純情乙女だった。自分と正反対の彼女の理想に近づこうと、ジョンは夜学に通い、ポルノ動画も我慢、我慢。
しかし、ようやく迎えた彼女とのセックスは、ポルノ動画にかなわなかった......。眠る彼女をベッドに残し、再びポルノを見始めるジョン。しかし、つかの間の現実逃避はバーバラに見つかり、二人の仲は険悪になる。一方、ジョンは夜学で年上の女性エスター(ジュリアン・ムーア)と出会う──。
ゴードン=レビットの初監督、脚本、主演作
ポルノ動画の"二次元女性"しか愛せない男「ドン・ジョン」。女性二人と出会い、変わる心と成長を描く。クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」(10)など、ヒット作に引っ張りだこのゴードン=レビットが、初監督、脚本、主演に選んだのは恋愛コメディー。"ポルノ中毒男の恋愛"という際どい題材だ。
映画ではジョンの生活パターンが反復して描かれる。仲間とクラブで落ち合い、女をナンパして持ち帰り、ポルノを見て欲望を果たす。週末は家族と食事、教会でざんげ。繰り返される行動は、さまざまな出来事を経て微妙に変化する。
完ぺきな理想を持つジョンは、まず絶世の美女バーバラと出会う。恋愛映画を愛するバーバラと、ポルノ動画にはまるジョン。同じ二次元世界を愛する二人は、ともに理想とプライドが高く未熟である。未熟さゆえに互いを許すすべを持たない。そこへ登場するのがジョンより一回りほど年上のエスターだ。ジョンの懐に自然と入って来るエスター。訳ありの彼女と出会い、ジョンは本物の愛を知る。
パターン化したスタイリッシュな映像を積み重ね、主人公の心の変化を描いたゴードン=レビット。モノローグを多用した演出は「アニー・ホール」(77)の頃のウディ・アレン監督を彷彿させる。中盤までは細かいカット割りで、愛に満たされぬジョンの内面を表現。エスターとの出会いから徐々に流れが落ち着き、ジョンの愛の充実感を表現する。
無駄がなくユーモアにあふれ、饒舌な語り口でテンポがいい。初監督とは思えぬ腕に舌を巻いた。やや浮足立つ流れの中、ベテラン女優となったジュリアン・ムーアの落ち着いた存在が深みを与える。カメオ出演の人気スターも楽しい劇中映画を披露。ゴードン=レビットの驚くべき才能が開花した。
「ドン・ジョン」(2013年、米国)
監督:ジョセフ・ゴードン=レビット
出演:ジョセフ・ゴードン=レビット、スカーレット・ヨハンソン、ジュリアン・ムーア、トニー・ダンザ、ロブ・ブラウン
2014年3月15日、全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。