偽りの名前、別の人生、30年間守り抜いた嘘。
米ニューヨーク州。弁護士のジム・グラント(ロバート・レッドフォード)は、男手一つで娘を育てる模範的な市民だった。しかし穏やかな日常は、FBI(米連邦捜査局)の指名手配犯、シャロン・ソラーズ(スーザン・サランドン)逮捕で一変する。グラントとソラーズは30年前、ベトナム反戦を叫ぶ過激派グループ「ウェザーマン」の一員だった。
グラントの本名はニック・スローン。ウェザーマン元幹部で、ミシガン銀行襲撃事件で殺人罪に問われ指名手配されていた。危険を察したスローンは、町を脱出。娘を弟(クリス・クーパー)に預け、逃亡を開始する。米大陸を西へ。行く先々で元ウェザーマンの仲間に会い、かつて志を共にした女性幹部、ミミ・ルーリー(ジュリー・クリスティ)を探す。ミミこそ30年前の「嘘」を解く鍵を握っていた──。
米国は素晴らしい国だが、灰色の部分も存在する
レッドフォード5年ぶりの監督作「ランナウェイ 逃亡者」。ベトナム反戦運動、過激派グループの連続テロ、指名手配犯の逃亡と潜伏。ニール・ゴードンの同名小説映画化で、米国の苦い過去を振り返りつつ、人生の皮肉と社会の無情をあぶり出していく。
米アカデミー作品賞を獲得した「普通の人々」(80)、ブラッド・ピットをスターダムに押し上げた「リバー・ランズ・スルー・イット」(92)など、"監督"レッドフォードの手腕は手堅い。今回もしかり。米国の片田舎で幕を開けた物語は、よく練られた推理小説でありながら、全米を移動するロードムービーにもなっている。
ずらりそろったベテラン俳優の好演も作品を引き締める。サランドン、クーパー、クリスティにニック・ノルティ。スローンを追う若き新聞記者を、「トランスフォーマー」のシャイア・ラブーフが演じている。
ベトナム戦争と逃亡者。レッドフォードの過去の主演作「スニーカーズ」(92)に通じる要素だ。「米国は素晴らしい国だが、灰色の部分も存在する。自分が経験してきたからこそ、そういう部分に引かれる」。米国の光と影は、彼をとらえて離さぬテーマなのかもしれない。
「ランナウェイ 逃亡者」(2012年、米国)
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ロバート・レッドフォード、シャイア・ラブーフ、ジュリー・クリスティ、テレンス・ハワード、スタンリー・トゥッチ、クリス・クーパー、ニック・ノルティ、スーザン・サランドン
2013年10月5日、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。