2013/5/ 7

映画「風切羽 かざきりば」/児童虐待問題を静かに繊細に 全州映画祭で作品賞

児童養護施設から逃げ出した少女と、自分探しを続ける少年の一夜の逃避行の物語「風切羽 かざきりば」。児童虐待問題をテーマに、声高にメッセージを叫ぶのではなく、登場人物の行動や心の動きを繊細に描くことで、問題の深刻さを浮き彫りにする。

「風切羽」は鳥の翼のふちにあり、飛ぶ時に風を切る長い羽毛のこと。ペットとして鳥を飼う場合、飼い主は逃げないよう切り落とす。映画のタイトルは、虐待される子供をかごの鳥に重ね合わせている。鳥の羽は再び伸び、また空を飛べるようになる。しかし、傷を負った子供はどうか。どんな経験を経て、どう成長するか──。

「一時的に子供を保護するのは対処療法にすぎない」小澤雅人監督

メガホンをとったのは、10年に「こもれび」で長編デビューした小澤雅人監督。「風切羽」は、友人が親の虐待を受けていたことを知り、問題の根の深さと複雑さを世に問うため製作した。監督によると、虐待などで親と一緒に暮らせない子どもの9割は養護施設で生活し、プライバシーも守られない。親も解決法が分からず悩んでいる。行政の担当者は受け持つ子供が多すぎて、一人ひとりに十分な時間を割けないという。

5月3日まで開かれた韓国・全州国際映画祭では、国際コンペティション部門の2位にあたる作品賞を獲得。観客は監督と主演女優・秋月三佳の舞台あいさつに大きな拍手を送った。上映後の質疑応答では、背景となった日本の児童福祉の実態や、監督の演出の意図について多くの質問が飛んだ。監督は「一時的に子供を保護するのは対処療法にすぎない。必要なのは親のサポートも含めた根本的な対策」と話している。


「風切羽 かざきりば」(2013年、日本)
監督:小澤雅
出演:秋月三佳、戸塚純貴、川上麻衣子、重松収、石田信之、五大路子
2013年6月22日、全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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