「ビビアンはノーギャラ。現場でも和気あいあい」
──ウェイ監督ご自身、日本人の俳優、スタッフとの仕事はいかがでしたか。
台湾側のキャストは原住民の素人を、日本側はプロの俳優を使おうと決めていました。日本人の役は感情の変化をきちんと表現しなければなりません。演技のプロで、いわゆる"スター"を起用しようと思っていました。
(美術を担当した)種田陽平さんは心も視野も広い人です。台湾の映画産業は過去20年間低迷したため、美術面でもブランクがあった。今回は台湾原住民、漢民族、日本人の3つの要素を兼ね備えたセットが必要でしたが、種田さんはこちらの思いに応え、「『台湾の中にある日本人の町』を作ろう」と言ってくれたんです。
──安藤政信、ビビアン・スーの印象は?
ビビアンはタイヤル族出身。出演を即答で快諾してくれました。出演料はゼロだったうえ、製作資金の一部まで出してくれたんです。現場でもスター然とせず、スタッフとおしゃべりしたり、食事を一緒にしたり、和気あいあいとしていました。
安藤さんとは役柄について時間をかけ、きちんと話し合いました。出演が決まったら後は全力投球。セデック族出身で日本に留学している学生を探し、言葉や文化を3か月かけて学んでくれました。台湾に来た時もマネージャーなしでたった1人。撮影がない時はあちこち歩き回り、写真を撮ったり、おいしい茶葉を買ったりしていた。私からみると不思議な日本人だった(笑)。
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