茨城・水戸のおしぼりレンタル会社で働く貫一(三浦貴大)。学校で盗撮事件を起こし、行方をくらませていたかつての恩師・権藤(川瀬陽太)と再会する。権藤は貫一に見つかって恥をかき、貫一は権藤が東京から連れてきたキャバクラ嬢みはり(柳英里紗)に一目ぼれして奪い取る──。
「パビリオン山椒魚」(06)で長編デビューした富永昌敬監督。新作「ローリング」は水戸で全編ロケ撮影された。「教え子に恋人をとられ、私は鳥の巣になった」。映画は謎の独白で始まる。「風が吹けば桶屋がもうかる」ように、物語は奇妙な連鎖で展開していく。
人の一生を、ぐるぐる回るおしぼりにたとえると
権藤は盗撮事件で地元を追われたが、みはりを連れて10年ぶりに水戸へ帰る。教師の面影はもはやどこにもない。派手な柄シャツでだらしない風貌。貫一にみはりを奪われ、負け犬人生まっしぐらだ。あげく教え子たちにそそのかされ、盗撮ビデオでゆすりを計画。ビデオに写っていた女性をターゲットに、大金を巻き上げようとたくらむ──。
「ローリング」はレンタルされたおしぼりが回収され、洗濯され、再び出荷される過程を指す。人の一生を、ぐるぐる回るおしぼりにたとえているのだ。大人になりきれないダメ人間が次々登場し、負のオーラを発散する。向上心がある者はなく、地元のぬるま湯にどっぷりつかり、奇妙な連帯関係がオフビートに描かれる。盗撮、ゆすり、詐欺など、教師の不祥事に目をつけたところが面白い。冒頭のモノローグと伏線回収に監督の味を感じた。
「ローリング」(2015年、日本)
監督:冨永昌敬
出演:三浦貴大、柳英里紗、川瀬陽太、松浦祐也、礒部泰宏
2015年6月13日(土)、K'scinemaほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。