インドネシアで起きた100万人大虐殺の真相に迫るドキュメンタリー映画「アクト・オブ・キリング」が4月12日(土)公開される。事件の被害者に話を聞くのではなく、加害者に自らの行為を演技で「再現」させることにより、人間の心の闇と大量殺人の狂気をあぶり出した。ジョシュア・オッペンハイマー監督は「現代社会は巨大な暴力の上に築かれている」と語った。
喜々として大虐殺の方法を「演じて」みせた
1965年、インドネシア。9月30日の深夜、スカルノ初代大統領派の陸軍左派がクーデター未遂を起こした。後に大統領となるスハルト少将(当時)が鎮圧。「事件の黒幕は共産党」と断定され、インドネシア全土で同党支持者とされた人々や華僑ら100万人以上が殺害された。「9月30日事件」と呼ばれる一連の出来事は、その後30余年にわたるスハルト独裁体制のもとタブーになり、加害者の訴追も行われていない。
オッペンハイマー監督は当初、事件の被害者を取材していたが、軍の妨害で中断を余儀なくされた。そこで加害者──殺人の実行部隊となった地元のギャングたちに「あなたが行った虐殺を演じてくれませんか」と要請。スマトラ島メダン市で「1000人以上は殺した」と豪語する殺人部隊リーダーのアンワルらが、喜々として大虐殺の方法を「演じて」みせた。
2012年トロント国際映画祭などを皮切りに、同作は世界の映画祭を席巻。ドキュメンタリー映画の名匠で今回製作総指揮を務めたヴェルナー・ヘルツォーク監督が「映画史上類を見ない作品」と絶賛するなど、世界的に高い評価を得ている。
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