2014/4/10

映画「アクト・オブ・キリング」監督インタビュー 「効率良く仲間を殺し、トラウマを感じるのもまた、人間の資質」

アンワルは毎晩トラウマで悪夢を見ていた

──暴力は一貫して取り組んできたテーマですね。

特に暴力に魅力を感じているわけではない。むしろ「人は何かを語ることにより、どうやって自分を正当化するか」に興味がある。うそをついた痛み、真実から逃れようとする人間の側面、うそが与える影響に関心がある。だから「アクト・オブ・キリング」は物事を語ること、「自分はこういうものを見たくない」という否定についての映画でもある。

人が自分の見たくないものを、見たくないようにするために、どんな方法を使うか。どう物語をうまく使うか。今回はうそを一枚ずつはがしていって、本当は見たくなかったもの、つらい真実と痛みを発掘する作業でもあった。本物の自分と和解するためには、つらい真実と向き合わなければならない。

作品の中で暴力の再現シーンが目につきやすいが、65年に起きたことを伝えようとしたわけではない。現場でどんな暴力が行われたかを見てもらうためでもない。彼らが自分の頭の中で、あの出来事をどう再現しているのか。どう「物語って」いるのかを見せた。私は当時起きた出来事に興味はない。今現在、彼らが生きていくために、どんなうそをついているのか。どう語っているのかに興味があったんだ。

──自分の罪に向き合ったアンワルは、勇気がある人間といえるのでしょうか。

自分の気持ちに正直になる勇気があったともいえるが、やはり人を殺すことは自己中心的な行為だ。むしろ臆病だったのだと思う。ほかの加害者たちは痛みを心の奥底に隠している。しかし、アンワルは毎晩トラウマで悪夢を見ていた。痛みが心の表面近くにある。だから正直にならざるを得なかったのでは。勇気があるとはいえないだろう。

ジョシュア・オッペンハイマー Joshua Oppenheimer 1974年、米テキサス州生まれ。米ハーバード大、英ロンドン大に学ぶ。政治的暴力と想像力の関係性を探るため、10年以上にわたり民兵や暗殺部隊、犠牲者たちを取材。監督作品は「THE GLOBALIZATION TAPES」(03)など多数。英芸術・人権研究評議会ジェノサイド・アンド・ジャンル・プロジェクト上級研究員。関連著書も多数。

「アクト・オブ・キリング」(2012年、デンマーク・ノルウェー・英国)
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
2014年4月12日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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