ベランダで読書したりお茶を飲む......そんな優雅な午後のひとときに憧れていました。四年くらい前に引っ越してきたマンションは、ベランダがわりと広かったので、その夢を実現できるかも、とデッキチェアを買いに行きました。三年前くらいのことですが、たしかイデーで八千円前後のわりとおしゃれなデッキチェアを購入。紺のストライプがマリンっぽくて、リゾート感を醸し出しています。
目の前に広がる都会の眺望
ベランダにさっそく設置したのですが、ベランダにデッキチェアがあるという事実だけで満足してしまい、そのまま放置。というか、座っても目の前に見える眺めが、すすけたビルの壁面とか、向かいの老夫婦の家の洗濯物くらいで......。ベランダに座って洗濯物を眺めるのも変質者と思われそうです。そういえば知人のマンションでは、夜中帰ると向かいのマンションのベランダに男性がたたずんでいて、家の出入りをじっと見ていて怖いので引っ越したいと言っていました。狭い東京の住宅地で、ベランダに出て外を眺めていたら気まずいことが多そうです。
ただでさえ、家ではリラックスできないたちで、ソファを買ったものの座るのは一ヶ月合計で三十分くらい......ベランダのデッキチェアにまで座る余裕がありません。ベランダに置かれっ放しのデッキチェアは、台風や嵐の時に、倒れたり飛ばされたりしている状態で、どのくらいの規模の嵐だったのか推し量る目安として機能しています。それ以外はほとんど存在を忘れています。優雅な午後の幻想は、折り畳まれたデッキチェアのようにしぼんでしまいました。
座られないまま終わりそうなデッキチェアが不憫になってきたので、どなたか使ってくださる方をここで募らせていただきたいと思います。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。