「話が浅い人」に見えてしまう"話し方"があるらしい。気を付けたいポイント。
『頭のいい人が話す前に考えていること』安達裕哉 著(ダイヤモンド社)
知らず知らずのうちに、自分の言動が「頭の悪い人」になっているかもしれない......。『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)というタイトルに、ドキッとした人も多いのではないでしょうか。
著者は、コンサルタント歴22年の安達裕哉さん。話す前に意識するだけで「知性」と「信頼」を同時に獲得できる「7つの黄金法則」と「5つの思考法」として、これまでに得た知見をまとめています。ついやりがちなNGコミュニケーションを、本書より一部抜粋してご紹介します(第3回/全3回)。
「知性」と「信頼」を同時にもたらす7つの黄金法則 話すたびに頭がよくなるシート
深く考えるための5つの道具
まずは、バカな話し方をやめる 「客観視」の思考法
■思い込みが強いと頭が悪く見える
話が浅くなる理由は"認知バイアス" と大きく関係します。
バイアスとは「かさ上げ・偏り・歪み」を指す言葉で、「認知バイアスとは、偏見や先入観、固執断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉として使用される」と情報文化研究所所長の高橋昌一郎氏は述べています。
認知バイアスが、つまり偏見や先入観や思い込みが強いと、頭のいい人には、話が浅く聞こえてしまい"ちゃんと考えてた?"という心証を持たれてしまいます。
頭のいい人は、物事をできるだけ正確に、客観的にとらえようとします。極力、バイアスに意識的であろうとするのです。
認知バイアスは、だれでも持っています。だからこそ、バイアスに少し意識的になるだけで、"ちゃんと考えている人" になることができます。
とはいえ、認知バイアスの種類はたくさんありますので、ここでは話す前に注意してほしいものをふたつ紹介します。
話す前に注意すべきこと
1 確証バイアス ~人間は見たい世界しか見ない~
確証バイアスとは、自分の都合のいい情報ばかり集めて、自分にとって都合の悪い情報は無視する傾向のことです。人間は見たい世界しか見ないのです。
たとえば、だれかのことを"あの人は胡散臭い" と思ったとしましょう。そうすると、その人の胡散臭いようなしぐさや、言動ばかりが目についてしまうことがあります。これも確証バイアスによるものです。
人間は、自分の直感を正しいと思いたい生き物です。そのほうがラクだからです。それゆえ、直感が正しいとする情報を脳が勝手に集め、逆に直感に合わない情報はスルーするようになっているのです。
根拠の薄い人の話が浅く思われるのは「それって、自分に都合のいい情報を集めただけでしょ?」「それはあなたの思い込みでしょ?」と思われるからです。
本人は意見を言っているつもりでも、受け手にとっては直感でものを言っているだけ。つまり、感想の域を出ていないのです。
話す前に注意すべきこと
2 後知恵バイアス ~結果論ならいくらでも言える、評論家的思考~
ある芸能人夫婦が離婚したとします。すると、必ずこう言う人がいます。
「私、結婚を発表したときから、絶対離婚すると思ってた!」
また、組織の中では、このようなケースもよく見かけます。
なかなか成果が出なかった若手社員が、努力が実って、みるみる成果を出すようになり、出世したとします。
すると、その社員が新入社員のころに、少し面倒を見た先輩がこう言うのです。
「新入社員のときから知ってるけど、絶対に将来、出世すると思ってたよ。そういえば彼が入社したときの挨拶さ......」
後知恵バイアスというのは、その結果を知ったから判断しているのに、あたかもその結果を知る前から予測していたように考えてしまう心理状況です。これは、評論家思考と言い換えてもいいでしょう。
「あのプロジェクトは失敗すると思っていた」
「初めて会ったときから、あの人は怪しかった」
「若いころからあの人は他とは違った」
結果を知ったあとでものを言うのは簡単です。あたかもその結果に沿うようなストーリーを話すことで周りの人も、「なるほどな」と聞いてしまいます。
しかし、本当に、後輩が将来成功して、出世すると思ったら、成功する前に言えばいいのです。「君は、今うまくいってないかもしれないけれど、絶対成功するから頑張ってね」と。そうすれば、その後輩が出世したあとに、こう話すでしょう。
「実は、なかなかうまくいかなくて辛かったとき、先輩が励ましてくれたんです」
確証バイアスも後知恵バイアスも、本人はあたかも考えているような気になっていますが、賢いふりの典型ですから、こういった発言をしないように話す前に立ち止まることが大切です。
バイアスに意識的になり、自分と反対の意見や統計データにあたることで思考を深めよ。
安達裕哉さん
■安達裕哉さんプロフィール
あだち・ゆうや/ティネクト株式会社 代表取締役。1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が"本質的でためになる"と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。
画像提供:ダイヤモンド社
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