ただ、「普通の幸せ」を手にしてほしかった
失敗すればするほど、こうたは自信をなくす。だから失敗させたくないし、成功体験を積み重ねて自信をつけさせたい。くるみはそう考えていました。
ある日、人気ブロガーが子どもに空手を習わせていると知り、こうたを空手教室に連れていくことにしました。練習に打ち込み、友達と仲良くなり、4年生になったこうたは、めざましく成長した姿を見せます。
そんなある日、くるみは地元の公立中学で学級崩壊が起きているという話を耳にします。こうたはそこでやっていけるのか。こうたのために、私立中学を目指すことを決意しました。
「子どものために」というくるみの思いは、そこからしだいにエスカレートしていきます。ゲーム禁止、空手を辞めさせる、家事は放置......。朝から晩まで勉強漬けのタイムスケジュールを組み、こうたを縛りつけるようになったのです。
そして、6年生の2月。いよいよ受験当日を迎えます。家族も生活も犠牲にして、すべてをかけてきた中学受験。「今のこうちゃんなら必ず受かる」と信じていました。しかし、結果は不合格。「うそでしょ」
結局、こうたは地元の公立中学に通うことになりました。それならば3年後、高校受験を必ず成功させるのだと、くるみはますます過熱していきます。しかし、その思いとは裏腹に、こうたは生気を失っていって......。
は? 毒親? 私が? なんで?
こうたが生まれた時、ただ健康で、笑って、幸せに生きてくれたら、と願っていたくるみ。「普通の幸せ」のために、先回りして正しく導いてあげよう、と思っていただけなのです。すべては子どものため。では、くるみはどこで間違い、なにをしたらよかったのでしょうか。
愛情と狂気。その境目はどこにあるのでしょうか。ひょっとして自分も「毒親」......? と、ヒヤッとして身につまされる作品です。
※画像提供:KADOKAWA
(東京バーゲンマニア編集部)