2017/3/23

映画「サラエヴォの銃声」/第一次世界大戦の引き金となった事件をさまざまな人生に焦点をあてながら描く

サラエヴォの銃声 映画

(c)Margo Cinema, SCCA/pro.ba 2016

1914年、サラエボを訪れたオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子夫妻が、ボスニア系セルビア人青年に射殺された。第一次世界大戦の引き金となった事件。「サラエヴォの銃声」は、事件から100年の記念式典が開催される名門ホテルを舞台に、従業員、招待客、ジャーナリスト、警備員など、さまざまな人々の人生に焦点をあてながら、町の過去と現在を照らし出した作品だ。

卓越した作劇術を披露した傑作

(c)Margo Cinema, SCCA/pro.ba 2016

構成が凝っている。まず屋上では女性ジャーナリストが、事件をテーマにインタビュー番組を収録している。客室の一つでは、フランス人VIPが、式典演説のリハーサルに余念がない。エントランス付近では、女性従業員が式典に向けフル稼働中。地下では一部従業員がストライキを企て、支配人が阻止すべく動いている。個別のストーリーが同時進行していく。

屋上インタビューのテーマは、「暗殺者は英雄かテロリストか。皇太子は占領者か犠牲者か」。学識者らに続いてインタビューを受けるのは、暗殺者と同姓同名の男、ガヴリロ・プリンツィプだ。男はジャーナリストのヴェドラナに「(暗殺者は)セルビア人の英雄だ!」と叫び、口論となる。収録後も激論は続くが、やがて2人の間に男女の感情が芽生えていく。

一方、屋上のはるか下では、ストをめぐる従業員と支配人側との攻防が展開している。女性従業員のラミヤは、支配人のオメルから信頼されていたが、リネン室で働く母親がストに参加することを知られ、解雇通告を受けてしまう。

事態を好転させるため、ロビーから地下のリネン室、支配人室へと、ホテル内をせわしなく歩き回るラミヤ。暗い廊下の角を右に左に曲がりくねりながら移動する姿を真後ろから追うカメラが、ラミヤの緊張感と焦燥感を表現している。

(c)Margo Cinema, SCCA/pro.ba 2016

ガヴリロとヴェドラナ、ラミヤと母親、支配人のオメル。それぞれの運命が、クライマックスに向かって収れんしていく。そして訪れる衝撃的な幕切れ。大戦後も内戦で傷つき苦しんできたボスニア・ヘルツェゴビナ。悲劇の歴史が浮かび上がると同時に、今日の世界に広がる不穏な空気が立ち昇る。「ノー・マンズ・ランド」(01)のダニス・タノヴィッチ監督が、卓越した作劇術を披露した傑作だ。

「サラエヴォの銃声」(2016年、仏=ボスニア・ヘルツェゴビナ)
監督:ダニス・タノヴィッチ
出演:ジャック・ウェバー、スネジャナ・ヴィドヴィッチ、イズディン・バイロヴィッチ、ヴェドラナ・セクサン、ムハメド・ハジョヴィッチ、ファケタ・サリフベゴヴィッチ-アヴダギッチ
2017年3月25日(土)、新宿シネマカリテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

  • A新宿シネマカリテ
  • 住所〒160-0022
  • 東京都新宿区新宿3丁目37−12 新宿NOWAビル
  • TEL03-3352-5645
マップを読み込んでいます

プレゼントPRESENT

Instagram