ブラインド・マッサージ
盲人たちの世界をリアルに描いた中国映画「ブラインド・マッサージ」。生々しい作品だ。彼らのコミュニケーションのありようである。欠落した視覚を補うため、聴覚だけでなく、触覚や嗅覚も駆使した濃密なコミュニケーション。そのありようが生々しいのだ。
健常者であれば相手との間に一定の距離を取るのが普通。だが、彼らは遠慮なく密着して、触り合い、かぎ合う。"ふれあい"という言葉が比喩ではなく、本当に肌を触れ合わせる。過剰なまでの接触ぶりは何とも生々しい。エロティックと言ってもいい。
盲目という現実を恨むことはない
ブラインド・マッサージ
舞台は南京のマッサージ院。マッサージ師の資格を持った盲人たちが、住み込みで働いている。ある日、院長のシャーを頼って、同級生のワンと恋人のコンが転がり込んでくる。若いシャオマーは、あだっぽいコンにのぼせ上がるが、相手にされず意気消沈。そんなシャオマーを、先輩マッサージ師が行きつけの風俗店に誘う。シャオマーは初めて体を重ねたマンにのめり込み、店の常連となる。
風俗嬢であるマンに熱を上げるシャオマー。その純情にほだされるマン。盲人と風俗嬢。ともに日陰の存在だ。そんな2人が強くひかれ合う。彼らの恋ははたして成就するのか――。
美人でありながら盲目ゆえに、その価値が理解できないドゥ・ホン。結婚に憧れ何度も見合いをするが、ことごとく破談となる院長のシャー。サラ金に手を出した弟の尻ぬぐいに奔走するワン。それぞれが悩みや苦しみをかかえながらも、希望を失わず人生を生きている。盲目という現実を恨むことも、他人に甘えることもなく、自らの運命を受け入れ、懸命に生きている。
ブラインド・マッサージ
描かれるのは、恋、セックス、家族、夫婦、キャリア。同情も啓蒙もなく、ただただ、盲人のリアルな世界に肉薄したい。そんな監督の情熱が全編を貫く力作だ。
「ブラインド・マッサージ」(2014年、中国・フランス)
監督:ロウ・イエ
出演:ホアン・シュエン、チン・ハオ、グオ・シャオトン、メイ・ティン
2017年1月14日(土)、アップリンク渋谷、新宿K's cinemaほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。