映画「スター・トレック BEYOND」/不時着船を助けに行ったエンタープライズ号が撃破!?
(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
2009年に始まったリブート(再起動)シリーズ第3弾「スター・トレック BEYOND」。監督は前2作のJ・J・エイブラムスから、「ワイルド・スピード」シリーズのジャスティン・リンにバトンタッチ。エイブラムスは製作に回った。同シリーズで俳優がスタッフに参加する伝統が受け継がれ、スコッティ役のサイモン・ペッグが共同脚本に参加している。
宇宙探査3年目に入ったU.S.S.エンタープライズ号。未知の惑星に不時着した宇宙船救出に向かうが、到着直前に無数の飛行物体に襲われる。船は大破し、クルーは散り散りに救命艇で脱出。宇宙空間に放り出される──。
テーマは「救済」と「裏切り」
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まず作品の鍵となる「パワーストーン」をめぐり、エイリアンとカーク(クリス・パイン)が軽妙にやり取りして物語は幕を開ける。航海3年。船がわが家になったクルーの恋愛、生活をテンポよく描きながら、カーク、スポック、マッコイ、スコッティらおなじみの面々にスポットをあてる。船が大破した後は、ばらばらになったクルーが単独で動き、個々のエピソードが並行して進む。意表を突く展開だ。
今回のテーマは「救済」と「裏切り」だろう。不時着船を助けに行ったエンタープライズ号は、敵のエイリアン、クラール(イドリス・エルバ)のわなにはまって撃破されてしまう。ショッキングでファンも驚きの描写だろう。船を失ったクルーたちは、不時着した星からどう脱出するか。新登場のエイリアン、ジェイラ(ソフィア・ブテラ)が運命の鍵を握る。
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新シリーズ3作目で監督が代わり、作品のテイストがやや変わった。「スター・トレック」といえば宇宙船同士の戦いだが、今回は無数の飛行物体に攻撃され、異星人に船内に侵入されたクルーが、フェイザー銃で応戦する描写も登場。エンタープライズ号の円盤状の外見を模した斬新なアクションも展開する。不時着した星に残された100年前のオートバイにカークが乗り、おとりとなって敵に立ち向かう。「ワイルド・スピード」で超絶カーアクションを見せたリン監督は、持ち味をいかんなく発揮している。
作品の質は申し分ないが、リブート版の難点は決定的なテーマ曲を欠くことだ。旧シリーズはテレビ版のA・カレッジによる軽快なメロディー。旧映画版はJ・ゴールドスミスの重厚な調べを思い出すが、リブート版にはそれがない。音楽担当のマイケル・ジアッチーノが劇伴に徹したことが惜しい。
「スター・トレック」はリブート版と旧シリーズが別次元、いわゆるパラレル・ワールド(並行世界)で描かれる。今回はその境界線を交差させる演出も取られて心憎い。旧シリーズで長くスポックを演じ、昨年亡くなったレナード・ニモイ、今年事故死したチェコフ役のアントン・イェルチンに捧ぐ、シリーズ屈指の感慨深い作品となった。
「スター・トレック BEYOND」(2016年、米国)
監督:ジャスティン・リン
出演:クリス・パイン、ザッカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、カール・アーバン
2016年10月21日(金)、IMAX3D、デジタル3D、2Dで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。