(C)2015 Idol Film Production Ltd/MBC FZ LLC /KeyFilm/September Film
パレスチナのガザ地区。1948年のイスラエル建国以来、数多の紛争を経験してきた町は、2007年に封鎖され、人々の自由はさらに制限された。そんなガザを歌声で勇気づけた青年歌手の半生を、米アカデミー賞外国語映画賞候補作「パラダイス・ナウ」(05)、「オマールの壁」(13)のハニ・アブ・アサド監督が映画化した。
ガザで夢を追うことの難しさ
05年、ガザ。少年ムハンマド・アッサーフ(カイス・アタッラー)は姉のヌール(ヒバ・アタッラー)と友人の4人でバンドを組んでいる。楽しく歌えれば満足のムハンマド。一方、ヌールはカイロのオペラハウスで歌うことを夢見て、魚売りや結婚式での演奏で資金を集めていた。ところが、中古の楽器を手にして夢に一歩近づいた矢先、ヌールは腎不全で倒れてしまう。ムハンマドは手術費を工面しようと奔走するも、ヌールは力尽きた。残されたムハンマドの胸には、姉の言葉と夢が秘められていた。
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12年、イスラエルの封鎖によってガザは激変していた。成長したムハンマド(タウフィーク・バルホーム)は亡き姉の夢をかなえるため、スカイプを通じてオーディションを受けるも失敗。友人の言葉に背中を押され、検問所を突破してカイロを目指す――。
作品のモデルとなったのは、13年に人気オーディション番組「アラブ・アイドル」で優勝したムハンマド・アッサーフ。二人の俳優が二つの時代を映すように演じる。少年期の05年と青年期の12年で、ガザはまったく別の町のように変わっている。封鎖を受けてがれきの山が目立ち、ガザで夢を追うことの難しさを見せつけられる。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。