出雲あきらの演劇Life
トニー賞授賞式に22回出席している唯一の日本人、出雲あきら氏が今注目のお芝居を紹介。演劇評論家でありながら現役広告マンでもある出雲氏独自の視点で、ビギナーさんにもぴったりな1本を紹介します。
2016/8/25

【第47回】「ヨーロッパ企画」の大阪のおっさんを描く意欲作 「来てけつかるべき新世界」上演!

トリーッキーな劇構造と非日常的な設定とのギャップ

この劇団の特徴は、上田が設計したトリーッキーな劇構造と非日常的な設定の中で、冴えないキャラクターたちがモソモソとのんきな会話を紡ぐ、といったユルさと緻密さが同居する独特の作風にあります。

多くの劇団は脚本家がテーマを設定し、ストーリーを考え、セリフを台本にして稽古を行います。ヨーロッパ企画も劇団創設当時はそのように行っていましたが、10年ほど前から上田が描きたいイメージを原型の段階で稽古場に持ち込み、出演者やスタッフと話し合いを重ねてアイデアを出し合いながら創っていくようになりました。

例えば今回の公演では、上田の頭の中には、大阪・新世界のおっさんたちが串かつを食べている、そこにドローンが襲ってくるという画が出来上がっています。これを稽古場に持ち込み、セリフやストーリーを出し合い、最終的に上田がまとめあげるという方法で脚本を作っていきます。

特殊な創作方法のため、出演者はおのずと慣れている劇団員が中心になります。時に芝居とは思えないほどナチュラルで気負いがない会話のやり取りも、学生時代から培われてきた劇団員による息のあったアンサンブルから生まれており、独特な世界観が幅広い人気を博しています。

京都人の上田にとって近いようで遠く感じる大阪、その中でも最もディ-プな街・新世界を舞台に描くSF作品。後に、再び映画化されるような傑作が誕生しそうな予感がします。是非、劇場で確かめてみてください。


ヨーロッパ企画第35回公演『来てけつかるべき新世界』

栗東プレビュー公演 9月3日(土)栗東芸術文化会館さきら 中ホール
京都公演 9月9日(木)~9月11日(日)京都府立文化芸術会館
東京公演 9月16日(金)~9月25日(日)本多劇場
広島公演 9月29日(木)JMSアステールプラザ 中ホール
福岡公演 10月1日(土)~10月2日(日)西鉄ホール
大阪公演 10月5日(水)~10月11日(火)ABCホール
四日市公演 10月15日(土)四日市市文化会館 第2ホール
高知公演 10月21日(金)高知県立県民文化ホール グリーンホール
横浜公演 10月27日(木)~10月30日(日)KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
名古屋公演 11月2日(水)名古屋市東文化小劇場

作・演出:上田誠
音楽:キセル
出演:石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力(以上、ヨーロッパ企画)
金丸慎太郎、藤谷理子、福田転球

作品の詳細は公式サイトで。

出雲あきら 出雲あきら

演劇評論家。ラジオや雑誌等で多くの演劇コーナーを担当。トニー賞授賞式に20年出席している唯一の日本人。広告会社電通に勤務する会社員でもある。

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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