「ローマの休日」、「スパルタカス」、「ジョニーは戦場へ行った」、「パピヨン」──。1940~50年代ハリウッドに吹き荒れた共産主義者弾圧事件「赤狩り」に屈せず、数々の名作を世に送り出した名脚本家、ダルトン・トランボの半生を描く「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」。主演は米人気ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストン。
名を隠さざるを得なかった理由に思いを馳せる
1947年、米国。東西対立が色濃くなる中、赤狩りの波はハリウッドにも及んでいた。ジョン・ウェイン(デヴィッド・ジェームズ・エリオット)やコラムニストのヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)らによる赤狩りの急先鋒組織「アメリカの理想を守るための映画同盟」は、労働者の所得向上を訴えるトランボ(クラストン)をターゲットに定める。
トランボは議会公聴会での証言を拒み、ブラックリストに加えられる。共産主義者のレッテルを張られた映画人が次々仕事を奪われる中、トランボは本名を隠して脚本を書き続ける。その中の一つ「ローマの休日」を、友人のイアン・マクラレン・ハンター(アラン・デュディック)に託すのだった。
1950年6月、トランボは有罪判決を受けて収監。家族の手紙を支えに1年の刑期を終えるも、さらなる苦難が待ち受けていた。ブラックリスト入りした男に脚本を書かせる映画会社などなかったのだ。そこでトランボは一計を案じる──。
「自由の国」であるはずの米国が、第二次世界大戦でファシズムとの戦いを終えた数年後、自己矛盾を抱えた。敵国ソ連の思想に同調する者をつるし上げ、言論の自由を制限する社会。ハリウッドの輝かしいイメージと対極だ。
しかし、そんな暗黒時代が名脚本家トランボを生んだのかもしれない。社会からつまはじきにされるほど、トランボの製作意欲は高まった。不当な弾圧に屈せぬ強い意志が、数々の名作を生んだ。一方で、あまりに多くの人たちの生活が「正義」の名のもと壊された。
信条のため犠牲をいとわず、すべてを捧げて書き続けた男。名を隠さざるを得なかった理由に思いを馳せれば、数々の名作もまた違ってみえるかもしれない。
「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(2015年、米国)
監督:ジェイ・ローチ
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、エル・ファニング、ヘレン・ミレン
2016年7月22日(金)、TOHOシネマズシャンテほか全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。