ジェイク・ギレンホールが「ナイトクローラー」に続き、肉体改造のアクセルを踏み込んだ。アントワン・フークア監督新作「サウスポー」は、ボクシング世界チャンピオンの転落と再生を描く人間ドラマ。ギレンホールが半年の訓練で7キロ減量し、ボクサーの「体」を得て熱演する。
ボクシングはチェスと一緒だ
米ニューヨーク。ボクシング世界ライトヘビー級チャンピオンのビリー(ギレンホール)は、怒りにまかせて戦う過激な選手だ。しかし、自分の起こした暴力沙汰に巻き込まれ、最愛の妻モーリーン(レイチェル・マクアダムス)が死んでしまう。ビリーは自暴自棄に陥り、地位も名誉も財産も喪失。幼い娘レイラ(オオーナ・ローレンス)とも引き離され、人生のどん底に突き落とされる。
暗闇でもがくビリーは、アマチュア・ボクシングのトレーナー・ティック(フォレスト・ウィテカー)に救いを求めた。「お前の短気は命取りだ」、「腕力ではなく頭を使え。ボクシングはチェスと一緒だ」。ティックの厳しい言葉に、ビリーは自らと向き合い、再生への道を探る。自分を信じた妻に報い、愛する娘と再び暮らすため──。
ギレンホールの人物造形が光る。短気で粗野、力で相手をねじ伏せるチャンピオン。怒り=負のエネルギーでスターダムを駆け上がった男が、妻を失い初めて自らを律し、他人の言葉に耳を傾け、真の強さを知る。ギレンホールは肉体だけでなく、陰うつとした眼差しまで作り上げている。
デンゼル・ワシントンの悪役が記憶に残る「トレーニング・デイ」(01)と同様、フークア作品には共通して刹那的な空気が漂う。重く激しい男たちの中、妻を演じたマクアダムスが一服の清涼剤のように、甘く可憐な空気を放っている。
「サウスポー」(2015年、米国)
監督:アントワン・フークア
出演:ジェイク・ギレンホール、レイチェル・マクアダムス、フォレスト・ウィテカー、オオーナ・ローレンス、カーティス・"50セント"・ジャクソン
2016年6月3日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。