TPPで不安視される「食の安全・安心」 買うなら国産がいい食品1位は「牛乳」94.3%
2015年10月5日にTPP(環太平洋パートナーシップ)交渉が大筋合意し、日々のニュースのなかで「TPP」という言葉をよく目にすることが多くなりました。連日さまざまな分野で海外に向けた取り組みも始まっています。
一般消費者は、この流れをどう感じているのでしょうか。総合マーケティング支援を行なう「ネオマーケティング」が、全国の15歳~69歳の男女1200人を対象に「TPPと食品購入」に関する意識調査を行ないました。
そこで分かったのは、TPPを支持はするものの食の安全や安心に不安を持っている人が多い、ということです。
国産の牛乳に対する信頼感
「TPPの大筋合意内容(農林水産分野)」を評価するか? という質問には69.1%と約7割の人が「評価する」と答えています。しかし、「TPPの大筋合意内容(農林水産分野)」に関して不安に思うこと」という質問では、「食品の安心・安全への不安」が約半数の49.2%にものぼりました。
「国内の農林水産業が刺激されて、競争力をつけると思う」「安価な輸入品が入ってくることによって、食品全体の価格が下がると思う」など、メリットは多々あれど、日々口にするものに対しては不安はぬぐいきれません。
「食材や食料品が国産であることに対する意識」についても、「とても意識している」、「まあ意識している」「意識しているときもある」と答えた人の合計は87.5%。女性は91.5%と9割を超えています。
では、食品の中で「国産を買いたいと思うもの」はなんでしょうか?
1位は牛乳で94.3%。穀類(93.7%)、鶏卵(93.0%)、野菜類(91.3%)を抑えての1位です。
現在、国内で販売されている牛乳はTOP10の食材のなかで唯一100%国産であり、他の食材と比べて国産の牛乳に対する信頼感を持っている人が多いのかもしれません。
しかし、酪農家の状況を見ると、経営状況は厳しく、生乳生産量は年々減っているのが現状です。1963年のピーク時から42万戸から2015年の調査では1万7700戸になりました。特に都府県では、10年~15年間の5年間で1万4300戸から1万1020戸と、約23%の酪農家が減少しています。
理由は、高齢化や後継者不足に加え、東日本大震災、口蹄疫、夏の猛暑などが重なったことや、流通飼料など生産コストの高止まり、さらにはTPPなどによる将来の不安から経営維持のための投資を控える酪農家もあり、生産基盤は非常に脆弱化しています。
このような状況に対し、地域の農協や行政などによる就農支援や、酪農家が休みやすいように代わって搾乳や飼料給与などの作業をする酪農ヘルパー制度など、酪農への新規就農を地域ぐるみでサポートする取り組みが行われています。
例えば、東北有数の酪農地帯として知られる岩手県の例をあげると、25歳で新規就農した梶本希さん(八幡平市)も、そんなサポートを受けて独り立ちした一人。25歳のとき、JA新いわての助けを借りて、近隣の廃業した酪農家の牛舎を購入し、牛10頭規模で酪農家としてのスタートをきりました。
現在は、搾乳牛34頭、育成牛30頭を飼育しています。"突っ走る性格なので苦労は感じなかった"という梶本さん。「酪農家は魅力的な仕事。牛乳を応援して欲しい」と理解を求めます。
「これから先の八幡平市は高齢化が進み多くの酪農家が廃業するような状況になるかもしれません。そういう状況だからこそ、逆に新規就農を目指すにはチャンスのある地域なんです。牛を育て生乳をしっかり搾る。周囲のサポートに任せることは任せながら、空いた時間があれば、独自の乳製品づくりなどにチャレンジしてみる。そんな酪農家が増えてほしいですね」
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。