2014/6/ 5

映画「グランド・ブダペスト・ホテル」/豪華キャストでおくる群像劇 奇想天外な物語、煙に巻く演技で不思議の世界へいざなう

ウェス・アンダーソン監督最新作「グランド・ブダペスト・ホテル」。レイフ・ファインズ、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、ハーベイ・カイテル、ジュード・ロウ、ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、ジェイソン・シュワルツマン、レア・セドゥ、ティルダ・スウィントン、トム・ウィルキンソン、オーウェン・ウィルソン──。キャストを眺めるだけで心躍る群像劇だ。

ホテルで起きた殺人事件 謎解きの行方は?

欧州の東端、旧ズブロフカ共和国。国民的著名作家の(ウィルキンソン)が語り始める。「私が本当に聞いた話だ。まさに思いもよらない展開だった」。それは奇想天外な物語だった。

時はさかのぼって1968年。若き日の作家(ロウ)は、保養でグランド・ブダペスト・ホテルに宿泊した。ホテルのオーナー、ゼロは謎めいていた。貧しい移民からどうやってホテルを買うまでになったのか。ゼロは作家に不思議な半生を打ち明ける。

さらにさかのぼって32年。若きゼロ(トニー・レボロリ)は、ホテルのベルボーイとして働き始めた。師で父親代わりとなったのは、"伝説のコンシェルジュ"グスタヴ・H(ファインズ)。宿泊客の目当ては彼の「最高のおもてなし」だった。

ある日、グスタヴの最高の上客マダムD(スウィントン)が何者かに殺される。遺言状には「貴重な絵画をグスタヴに譲る」と書かれていた。怒った息子(ブロディ)に殴られたため、グスタヴとゼロはこっそり絵画を持ち出すが──。

「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(01)、「ムーンライズ・キングダム」(12)のアンダーソン監督が、持ち味を存分に発揮した作品だ。時代は30年代、60年代、現代の三つ。ホテルで起きた殺人事件をめぐり、コンシェルジュとベルボーイ、それを取り巻く人々が謎解きに巻き込まれていく。

キャストは豪華のひとこと。個性派俳優がずらり顔をそろえ、壮大な群像劇を盛り立てる。いずれ劣らぬ実力者が、ある時はふざけ、ある時は大まじめに、ある時はすました顔で観客を煙に巻く。演技に揺さぶられる醍醐味を味わえる。

美術や衣装も素晴らしい。淡いピンクの外観のホテルに、チョコレートのようにかわいらしく、凝ったものたちが詰め込まれている。洗練された衣装、カラフルなケーキ、豪奢な調度品。柔らかい照明が舞台を包み、観客を不思議の世界にいざなう。

犯罪劇でもあり、ラブストーリーでもあり、歴史物でもある。コンシェルジュの「おもてなし」を受けながら、ひとときの夢を見られる作品だ。


「グランド・ブダペスト・ホテル」(2013年、英・独)

監督:ウェス・アンダーソン
出演:レイフ・ファインズ、トニー・レボロリ、F・マーレイ・エイブラハム、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、ハーヴェイ・カイテル、ジュード・ロウ、ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、シアーシャ・ローナン、ジェイソン・シュワルツマン、レア・セドゥ、ティルダ・スウィントン、トム・ウィルキンソン、オーウェン・ウィルソン
2014年6月6日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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