オーストラリア東海岸、美しい入江の町。40代のロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は幼なじみ。それぞれ息子のトム(ジェームズ・フレッシュビル)、イアン(ゼイビア・サミュエル)と暮らしていた。母親同士は姉妹、息子同士は兄弟のように、友人を超えた絆があった。
幼いころに父を亡くしたイアンは、ロズを家族のように慕っているが、思慕は次第に恋心へ変わっていく。一方、ロズの夫はシドニーに大学講師の職を得て、家族に転居を提案する。海辺の町を愛し、地元で仕事も続けるロズは迷い、同意できずにいた。
世間的に許されぬと知りながら、4人は関係を解消することができない
ある夜、酒に酔ったトムに付き添ったイアンは、ロズへの気持ちを抑えきれず、二人は一夜を共にする。目が覚めたトムは、母とイアンの間に起きたことを知り、ショックを受けた勢いでリルに迫る。リルもトムを受け入れ、母二人は互いの息子と関係を持つことになる。
世間的に許されぬと知りながら、4人は関係を解消することができない。ロズは夫の提案を拒み、一人海辺の町に残る決意をする。2年後。夫妻は離婚し、トムは父についてシドニーで働き始めた。リルへの思いも薄れ、仕事仲間の女性と結婚を決意する。
一方、ロズもイアンに関係の解消を申し出る。イアンは抵抗するが、受け入れざるを得なかった。息子たちはそれぞれ伴侶を得て、新たな人生の一歩を踏み出したはずだったが──。
姉妹のように育った母親同士が、互いの息子を愛する「美しい絵の崩壊」。ノーベル賞作家ドリス・レッシングの原作を、女性監督アンヌ・フォンテーヌが映画化した。青い海に囲まれた入り江、白い砂浜、輝く太陽。どこまでも透明な楽園を舞台に、純粋で一途な愛が育まれる。
一つ間違えれば生々しく、陳腐に陥りかねない話。母親役のライト、ワッツが抑えた演技でコントロールしている。理性を保ちつつ、禁断の愛にのめり込む過程が、絶妙なさじ加減で表現される。それぞれの関係は最後まで先行きが読めず、切り口を変えたサスペンスの味わいもある。
「美しい絵の崩壊」(2013年、豪・仏)
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ナオミ・ワッツ、ロビン・ライト、ゼイビア・サミュエル、ジェームズ・フレッシュビル、ベン・メンデルソーン
2014年5月31日(土)、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。